JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

お手並み拝見

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「そ……そこまで言うんなら好きにすればいいですよ。お手並み拝見させてもらいます」

吉佐倉綾乃よざくらあやのは目を逸らしながらそう言い、みほちゃんは、

「ぶ~…」

と不満そうな顔をしながらも落ち着いてくれたようだった。

こうなるといよいよ、錬治れんじも気持ちを引き締めないといけないと思った。

『二人に対してここまで言ったんだから、大人としてそれを守る姿勢を見せなきゃ…!』

と。

彼も、大人がいつも口だけでその場を取り繕うのを見てて内心では馬鹿にしてたクチだった。できもしないことを、実際にやりもしないことを言って問題を先送りしてるだけのそれを『情けない』と思ってきた。だから、

『自分はそうじゃないようにしなきゃ』

と思うのだ。

「じゃあ、次いきますよ」

頭に浮かぶ光景の中から切羽詰まってると思われるものを選び、移動する。今度は東南アジアのどこかの国のようだった。

「タイですね。プーケットです。家族旅行できたことがあります」

吉佐倉綾乃がやや呆然とした様子で言う。

それを耳にしながら、錬治はやはり人混みの中に現れていた怪物を払い除ける。でも、そこも何人かが既に犠牲になっていた。

「……」

吉佐倉綾乃もどうやら察してるようで険しい表情をしながらも、みほちゃんの手前、変に騒ぎ立てないようにしてくれてるらしい。

その後も何件か回り、今日だけで十八件を片付けることができた。

『不慣れな初日にしてはまあまあのペースじゃないかな…』

そんなことも思う。

正直、腹も減ってきたし、再び日本に戻ってきて十九件目を片付けた後、タコ焼き屋と同じように古いレジを使ってる、今度はタイ焼き屋で飲み物と作り置きのタイ焼きを貰って、代わりに代金を置く。

「そっか、バーコード対応のレジを通さないといけないところじゃ、お金を置いとくだけじゃ店に迷惑になるからか」

吉佐倉綾乃は錬治の意図を察してくれたらしい。

「ふーん。割と考えてるんですね。大人ってもっとこう、物事を自分に都合よく解釈してルールとか捻じ曲げるもんだと思ってました。『仕方ないだろ』とか言って」

その言い方に、相当、思い当たる節があるんだろうなと錬治は感じてしまった。そしてそれは彼も同じだった。

「まあ、僕もいい加減な大人の一人だけど、なるべくちゃんとできるところはしたいからね」

公園のベンチで三人で座り、タイ焼きを頬張る。もっとも、錬治は殆ど食べられなかったが。一部をちぎって何とか食べて、残りはみほちゃんに食べてもらう。

癌が進行しており、もはやまともに食事もできなかったのだ。

一方、クォ=ヨ=ムイはさすがに<神様>だけあって別に食事とかも必要ないのかと思うと、公園のベンチに置き去りにされた食べかけのハンバーガーと飲み残しのソフトドリンクを、包装やペットボトルごと口に入れ、バリバリと食べてしまった。

「え? おばちゃん! そんなことしたらおなかこわすよ!?」

驚いて声を上げるみほちゃんに、クォ=ヨ=ムイは、

「キヒハハハ! それはお前達人間の話だ。私にとってはお前達人間の食い物とそれ以外の区別など関係ない。なんだったら、人間だって食えるんだぞ?」

と、邪悪に笑ってみせたのだった。

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