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怨嗟の章
勝利条件
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吉佐倉綾乃と名乗った彼女は、大学三回生ということだった。今日はこの後友人と一緒に映画に行く筈だったらしい。
「まさか映画を観る前に自分が映画みたいな経験することになるとはさすがに思いませんでしたよ」
と、辛辣に言い放つ。まあ無理もないことだろうが。いきなりこんなことに巻き込まれて、見知らぬ中年男のハーレムに加えられそうになって、しかも「手籠めにしてしまえ」とか言われていい気分でいられる方が普通じゃないだろう。
「ねえ、てごめってなに…?」
まだタコ焼きを食べてたみほちゃんが、またそう訊いてくる。
「…無理矢理エッチなことをしろってことだよ」
答えに困ってた神河内錬治の代わりに、吉佐倉綾乃は忌々しそうにそう言った。
『こんな小さい子にそんなストレートに言わなくても……』
神河内錬治はそう思ったものの、
「うえ~…?」
と、嫌悪感丸出しでクォ=ヨ=ムイに軽蔑の眼差しを向けたみほちゃんの様子を見る限り、変に回りくどい言い方をせず、しかも同じ女性の口からそう言ってもらえたのは、むしろ正解だったのかもしれない。
もっとも、
「ふふん…!」
当のクォ=ヨ=ムイは意にも介しちゃいなかったようだが。
「それにしても、これを二百万秒続けるってことですか?」
改めて神河内錬治に向き直って吉佐倉綾乃が訊いてくる。
彼はクォ=ヨ=ムイをちらりと見ながら、
「僕はそう聞いてる。あんまり信用できないけどね」
と、せっかくだからと正直な気持ちを吐露した。
「くかか、信じるも信じないもお前達の勝手だが、そのままにしておけば人間共が皆殺しになるってことには変わりない」
イヤらしい笑みを浮かべながらやっぱりクォ=ヨ=ムイは言う。
「勝利条件は?」
吉佐倉綾乃が続けて尋ねる。
「奴らを殲滅することだ。一匹でも漏らせば、私はともかくお前達人間はひとたまりもない。ちょっとばかり破滅までの時間が長くなるだけだ」
『って、何でそんなに嬉しそうなんだ……!?』
口には出さなかったが、神河内錬治は苛立ちを隠しきれなかった。
だから改めて悟った。このクォ=ヨ=ムイにとっては人間が助かるかどうかなんてどうでもいいんだと。ただ自分が楽しみたいだけなんだと。
その一方で、
「怪物を倒せるのは、そこの、神河内さんとか言う人だけですか?」
淡々と質問を続ける吉佐倉綾乃に、彼は何だか頼もしいものも感じ始めていた。
だが同時に、
「いいや、別にお前にでもできるぞ。なんだったらそこのチビでも可能だ」
などと言い放つクォ=ヨ=ムイに、
『本当に僕でなくてもいいんだ……』
というのを実感させられる。
しかし翻って、
『こんなこと、みほちゃんはもちろん、吉佐倉さんにだってさせられない……』
とも思ったのだった。
「まさか映画を観る前に自分が映画みたいな経験することになるとはさすがに思いませんでしたよ」
と、辛辣に言い放つ。まあ無理もないことだろうが。いきなりこんなことに巻き込まれて、見知らぬ中年男のハーレムに加えられそうになって、しかも「手籠めにしてしまえ」とか言われていい気分でいられる方が普通じゃないだろう。
「ねえ、てごめってなに…?」
まだタコ焼きを食べてたみほちゃんが、またそう訊いてくる。
「…無理矢理エッチなことをしろってことだよ」
答えに困ってた神河内錬治の代わりに、吉佐倉綾乃は忌々しそうにそう言った。
『こんな小さい子にそんなストレートに言わなくても……』
神河内錬治はそう思ったものの、
「うえ~…?」
と、嫌悪感丸出しでクォ=ヨ=ムイに軽蔑の眼差しを向けたみほちゃんの様子を見る限り、変に回りくどい言い方をせず、しかも同じ女性の口からそう言ってもらえたのは、むしろ正解だったのかもしれない。
もっとも、
「ふふん…!」
当のクォ=ヨ=ムイは意にも介しちゃいなかったようだが。
「それにしても、これを二百万秒続けるってことですか?」
改めて神河内錬治に向き直って吉佐倉綾乃が訊いてくる。
彼はクォ=ヨ=ムイをちらりと見ながら、
「僕はそう聞いてる。あんまり信用できないけどね」
と、せっかくだからと正直な気持ちを吐露した。
「くかか、信じるも信じないもお前達の勝手だが、そのままにしておけば人間共が皆殺しになるってことには変わりない」
イヤらしい笑みを浮かべながらやっぱりクォ=ヨ=ムイは言う。
「勝利条件は?」
吉佐倉綾乃が続けて尋ねる。
「奴らを殲滅することだ。一匹でも漏らせば、私はともかくお前達人間はひとたまりもない。ちょっとばかり破滅までの時間が長くなるだけだ」
『って、何でそんなに嬉しそうなんだ……!?』
口には出さなかったが、神河内錬治は苛立ちを隠しきれなかった。
だから改めて悟った。このクォ=ヨ=ムイにとっては人間が助かるかどうかなんてどうでもいいんだと。ただ自分が楽しみたいだけなんだと。
その一方で、
「怪物を倒せるのは、そこの、神河内さんとか言う人だけですか?」
淡々と質問を続ける吉佐倉綾乃に、彼は何だか頼もしいものも感じ始めていた。
だが同時に、
「いいや、別にお前にでもできるぞ。なんだったらそこのチビでも可能だ」
などと言い放つクォ=ヨ=ムイに、
『本当に僕でなくてもいいんだ……』
というのを実感させられる。
しかし翻って、
『こんなこと、みほちゃんはもちろん、吉佐倉さんにだってさせられない……』
とも思ったのだった。
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