JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

自己紹介

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正直なところ、彼は<みほちゃん>とクォ=ヨ=ムイを連れてる時点で手一杯で、その大学生くらいの女性のことまで構う余裕もなかった。だから本音ではついてこないでくれた方が助かった。

なのに彼女はそれを逆手に取るかのように。

「なんか……私がいる方が迷惑って顔してますね……」

訝るような目つきでそう言ったかと思うと、「フン」と鼻を鳴らしながら、

「気が代わりました。いいですよ。一緒に連れていってください。ただし、終わったらここに戻してくださいよ。私、この後で約束があるんですから」

と、皮肉を込めた口ぶりで同行を承諾した。

『何でこうなるんだ……』

泣きそうな表情になりながら彼は思う。

『ハーレムと言えば<男の夢>みたいな風潮があるみたいだけど、僕みたいに人付き合いが苦手な人間には逆に拷問みたいなもんだよ……

クォ=ヨ=ムイ、みほちゃんに加えて三人目なんて……』

するとその思考を読み取ったクォ=ヨ=ムイが、満面の笑みで嘲った。

「はっはっは、残念だったな。お前の意図に反してなかなか順調じゃないか。もっとも、今の状態だとさすがに<ハーレム>というにはいささか色気が足りんが」

その嘲笑に、彼は反発するというよりも諦め顔だった。

『ホントにどこまでも人を小馬鹿にするな、この<神様>……』

でももうそれは諦めて、僕は先を急ぐことにする。

「で、結局、何をやってるんです?」

次の場所に移動しようとすると、女性が尋ねてくる。そういえばそれについては説明してなかった。

「それも口で説明するより見てもらった方がいいと思う。じゃあ、いくから」

そう言って僕は次の現場へと移動した。まるで画面が切り替わるように周囲の様子が代わって、女性が、

「うわっ!?」

っと声を上げた。

「な、な、な…!?」

取り敢えず説明は後にして、人混みの中に現れてた<一つ目の怪物>を薙ぎ払う。

「か、怪物……!?」

彼が怪物を始末するの見て、女性がやっぱり声を詰まらせた。それに振り返りながら、

「まあ、こういうことだよ。今の怪物が世界中に現れてるそうで、僕は二百万倍に加速されて、その退治をして回ってるってことなんだ」

と説明する。

「ま、ちょっとしたアトラクションだよ。アトラクション。もっとも、ゲームオーバーはお前達人間の破滅だがな」

クォ=ヨ=ムイはニヤニヤと笑いながらそう付け足してくる。

すると女性は、キッとクォ=ヨ=ムイを睨みつけつつ言った。

吉佐倉綾乃よざくらあやの……」

「…え…?」

「吉佐倉綾乃。それが私の名前です。あなたは?」

突然名乗られて理解が追い付かなかった。しかし数瞬の間をおいて、

「…あ、僕は神河内錬治かみこうちれんじ。この子は、くりさきみほちゃん。それでこっちのはクォ=ヨ=ムイ」

と返す。

「…クオ…?」

「クォ=ヨ=ムイだ。まあ名前などどうでもいいがな」

「…とにかく、僕達はこうやって世界中を移動してる。でも、今回のも間に合わなかったみたいだ……」

怪物の触手が首に食い込んでた黒人男性を見ながら、彼、神河内錬治は吐き出すように言ったのだった。

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