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怨嗟の章
二人目
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『スーパーとかに寄ろうにも僕は外国のお金とか持ってないし……』
そんなことを思っていた彼に、
「勝手に持ってくればいいじゃないか」
ニヤニヤ笑いながらクォ=ヨ=ムイが言う。
「子供の前でそんなこと言わないでください…!」
彼がそう言い返すと、みほちゃんも彼の後ろに隠れるようにしながらも、
「かってにもってっちゃいけないんだよ。どろぼうだよ」
ってクォ=ヨ=ムイに向かって言ってくれた。
『ああ、いい子じゃないか……』
こんな時だからって勝手に商品を持っていくのはよくないと考えてくれる<みほちゃん>に、彼はホッとするものを感じていた。
しかし、そんな二人に対して、
「…へっ……」
クォ=ヨ=ムイはニヒルな笑みを浮かべながら肩をすくめる。
『本当に人を苛立たせる天才だな。いや、神様だけど……』
などと彼は思ってしまった。
まあそれはさておき、仕方ないので一旦、彼は日本に戻ることにした。
『日本なら、病室を出る時に持ってきた財布に入ってるお金が使えるし。お金さえ置いておけば泥棒には……ならないよな、たぶん』
そう考えてのことだった。だがすぐに、
『だけど最近は、レジでバーコードとか読ませて商品管理してるんだっけ。そうするとコンビニとかでお金だけ置いていっても店側は困るのかな……』
とも気付いてしまう。
「世界が終わるかどうかという時に、よくそんな呑気なこと言ってられるな、お前」
呆れたように言ってくるクォ=ヨ=ムイを無視して、彼は次に立ち寄った日本のどこかの商店街の中で、バーコードを読むタイプじゃない昔ながらのレジを使ってるタコ焼き屋の店頭の冷蔵庫からペットボトルのフレーバー付きミネラルウォーターを出して、作り置きのタコ焼きももらって、代わりにお金をレジの脇に置いた。
そのペットボトルは小さい子でも握り潰せるくらいに柔らかいものだったから、みほちゃんにもちょうどいいと彼は思ったのだ。
「ぎゅっと握ったらお水が出てくるから、それをお口に入れると飲めるよ」
飲み方を教えてあげると、
「こうかな?」
と言いながらぎゅっとペットボトルを握ったみほちゃんが、
「わあ、おもしろい!」
って、空中に浮かんだ水の塊を口に入れて飲んでいた。
彼はその間に、商店街の中に現れていた怪物を追い払う。
けれど今回のは、みほちゃんの為に日本に戻ってきただけだったから、割とまだ余裕のあるところだった。
大学生くらいの若い女性の首に触手が伸ばされていたものの、届いてなかったのである。
「やれやれ、やっと二人目か」
そう言ってクォ=ヨ=ムイは指をパチンと鳴らしたのだった。
そんなことを思っていた彼に、
「勝手に持ってくればいいじゃないか」
ニヤニヤ笑いながらクォ=ヨ=ムイが言う。
「子供の前でそんなこと言わないでください…!」
彼がそう言い返すと、みほちゃんも彼の後ろに隠れるようにしながらも、
「かってにもってっちゃいけないんだよ。どろぼうだよ」
ってクォ=ヨ=ムイに向かって言ってくれた。
『ああ、いい子じゃないか……』
こんな時だからって勝手に商品を持っていくのはよくないと考えてくれる<みほちゃん>に、彼はホッとするものを感じていた。
しかし、そんな二人に対して、
「…へっ……」
クォ=ヨ=ムイはニヒルな笑みを浮かべながら肩をすくめる。
『本当に人を苛立たせる天才だな。いや、神様だけど……』
などと彼は思ってしまった。
まあそれはさておき、仕方ないので一旦、彼は日本に戻ることにした。
『日本なら、病室を出る時に持ってきた財布に入ってるお金が使えるし。お金さえ置いておけば泥棒には……ならないよな、たぶん』
そう考えてのことだった。だがすぐに、
『だけど最近は、レジでバーコードとか読ませて商品管理してるんだっけ。そうするとコンビニとかでお金だけ置いていっても店側は困るのかな……』
とも気付いてしまう。
「世界が終わるかどうかという時に、よくそんな呑気なこと言ってられるな、お前」
呆れたように言ってくるクォ=ヨ=ムイを無視して、彼は次に立ち寄った日本のどこかの商店街の中で、バーコードを読むタイプじゃない昔ながらのレジを使ってるタコ焼き屋の店頭の冷蔵庫からペットボトルのフレーバー付きミネラルウォーターを出して、作り置きのタコ焼きももらって、代わりにお金をレジの脇に置いた。
そのペットボトルは小さい子でも握り潰せるくらいに柔らかいものだったから、みほちゃんにもちょうどいいと彼は思ったのだ。
「ぎゅっと握ったらお水が出てくるから、それをお口に入れると飲めるよ」
飲み方を教えてあげると、
「こうかな?」
と言いながらぎゅっとペットボトルを握ったみほちゃんが、
「わあ、おもしろい!」
って、空中に浮かんだ水の塊を口に入れて飲んでいた。
彼はその間に、商店街の中に現れていた怪物を追い払う。
けれど今回のは、みほちゃんの為に日本に戻ってきただけだったから、割とまだ余裕のあるところだった。
大学生くらいの若い女性の首に触手が伸ばされていたものの、届いてなかったのである。
「やれやれ、やっと二人目か」
そう言ってクォ=ヨ=ムイは指をパチンと鳴らしたのだった。
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