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怨嗟の章
現実
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次に移動した先は、有名なマーライオンが見えるからシンガポールか。
ここでも観光客らしい人波の中に一つ目の怪物が現れていた。しかも、三人、さっきの白人女性と同じように首に触手が食い込んでいる。
『く…またか……』
動揺しそうになる自分を抑えて、怪物を払い除ける。
「なんだお前、ハーレム要員は要らないのか? さっきから手遅れな奴ばっかり片付けて」
クォ=ヨ=ムイがやはり嘲るように言った。それがまた癇に障る。
「いいから黙っててください。俺が引き受けたんだから俺のやり方でやらせてもらいます…!」
明らかにわざと煽る言い方をしてくるクォ=ヨ=ムイに対して、つい刺々しい言い方をしてしまった。
「…あ……」
ハッとなって<みほちゃん>を見ると、また怯えたような表情になっている。
「ごめんね。忙しくてイライラしちゃってたね。でもみほちゃんが悪い訳じゃないからね」
なるべく優しい言い方を心掛けて、みほちゃんの頭をそっと撫でる。すると彼女も、
「うん……」
と頷きながら少しだけ安心したような顔をしてくれた。
それからも、オーストラリア(例のオペラハウスが見えた)、ドイツ(国旗が上がってた)、インド(建物の感じからそう思ったが、もしかしたらネパールかも?)、アフリカのどこか(黒人ばっかりだったからたぶん)、中東のどこか(砂漠が迫ってたのといかにもな服装から)、ドバイ(ブルジュ・ハリファが見えたからきっと)、ハワイ(雰囲気でそう感じただけ。ひょっとしてグアム?)、北欧っぽいどこか(完全に雰囲気だけでそう思った)を、体感では一時間ほどで回ったのだった。
正直どれも手遅れではあったのだが……
「のどかわいた…」
既に一日のノルマ<十三体>を超えたところで、<みほちゃん>が不意にそんなことを言い出した。
あまり長距離を歩いた感じはしなかったものの、次々景色が変わるから、
『何となくすごくいろんなところに行ったような気分にはなるな……』
とも思った。
『って言うか、実際に行ってるけど。海外旅行なんて興味もなかったから、何気に初海外だったんだよな』
などと考えつつ、
「ごめんね。じゃあ何か飲むものを」
と言いながら、彼は周囲を見回した。
みほちゃんもそうだけれど、彼自身も水分補給しない訳にもいかない。
いかないのだが……
『とは言っても、自動販売機は間違いなく品物が出てこないだろうからなあ……
スーパーとかに寄ろうにも僕は外国のお金とか持ってないし……』
と、途方に暮れるしかなかったのだった。
ここでも観光客らしい人波の中に一つ目の怪物が現れていた。しかも、三人、さっきの白人女性と同じように首に触手が食い込んでいる。
『く…またか……』
動揺しそうになる自分を抑えて、怪物を払い除ける。
「なんだお前、ハーレム要員は要らないのか? さっきから手遅れな奴ばっかり片付けて」
クォ=ヨ=ムイがやはり嘲るように言った。それがまた癇に障る。
「いいから黙っててください。俺が引き受けたんだから俺のやり方でやらせてもらいます…!」
明らかにわざと煽る言い方をしてくるクォ=ヨ=ムイに対して、つい刺々しい言い方をしてしまった。
「…あ……」
ハッとなって<みほちゃん>を見ると、また怯えたような表情になっている。
「ごめんね。忙しくてイライラしちゃってたね。でもみほちゃんが悪い訳じゃないからね」
なるべく優しい言い方を心掛けて、みほちゃんの頭をそっと撫でる。すると彼女も、
「うん……」
と頷きながら少しだけ安心したような顔をしてくれた。
それからも、オーストラリア(例のオペラハウスが見えた)、ドイツ(国旗が上がってた)、インド(建物の感じからそう思ったが、もしかしたらネパールかも?)、アフリカのどこか(黒人ばっかりだったからたぶん)、中東のどこか(砂漠が迫ってたのといかにもな服装から)、ドバイ(ブルジュ・ハリファが見えたからきっと)、ハワイ(雰囲気でそう感じただけ。ひょっとしてグアム?)、北欧っぽいどこか(完全に雰囲気だけでそう思った)を、体感では一時間ほどで回ったのだった。
正直どれも手遅れではあったのだが……
「のどかわいた…」
既に一日のノルマ<十三体>を超えたところで、<みほちゃん>が不意にそんなことを言い出した。
あまり長距離を歩いた感じはしなかったものの、次々景色が変わるから、
『何となくすごくいろんなところに行ったような気分にはなるな……』
とも思った。
『って言うか、実際に行ってるけど。海外旅行なんて興味もなかったから、何気に初海外だったんだよな』
などと考えつつ、
「ごめんね。じゃあ何か飲むものを」
と言いながら、彼は周囲を見回した。
みほちゃんもそうだけれど、彼自身も水分補給しない訳にもいかない。
いかないのだが……
『とは言っても、自動販売機は間違いなく品物が出てこないだろうからなあ……
スーパーとかに寄ろうにも僕は外国のお金とか持ってないし……』
と、途方に暮れるしかなかったのだった。
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