JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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三学期の章

生涯

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大まかな推測がこれで立ったわけだが、問題はどうすればこの状況を脱することができるかだな。

以前の、<スーパーケモケモ大戦ブラックΣ>の時のような明確なクリア条件があるかどうかは分からない。

それどころかもしかするとここで私がゴキブリとしての一生を終えることがクリア条件である可能性がある。

うっかり毒餌を食ってというような間抜けな死に方ではなく、ここで生涯を全うするという形でだ。

でないと、私自身が何もかもを台無しにしてしまう危険性がある。

しかし、普通に生涯を全うし、寿命を終えて死んだのであれば、その危険性はほぼなくなる。

そして私は日守こよみに戻れるということだ。

まあ、それも確実というわけではないがな。

それでも、今の私はどうやらクロゴキブリらしいから、成虫の寿命は確か二百日程度だったか。それを持ち堪えればどのみち結果はでる。

取り敢えずはそれを目指すということになるか。

だが、もし、それで戻れたとしても、日守こよみとしてもそれだけ日数が経つわけで、長ければ三年生の半ば頃まで日守こよみは意識不明の寝たきりということか。

よしんば意識があったとしても、中身はゴキブリなのだからおよそ意思疎通などはできないだろうし、山下沙奈は心配するだろうな。

……むう、そう思うと、無性に腹が立ってきたぞ。

山下沙奈や碧空寺由紀嘉《へきくうじゆきか》らは、私のモノだ。それを悲しませたりすることは許さん。

とはいえ、何をどうすればいいかも分からんのだから、どうしようもないんだがな。

すまんが、帰ったらたっぷり抱き締めてやる。それまで待っててくれ。

などということを考えながら一通りその部屋の探索を済ませた。

基本的にはメンテナンスフリーなシステムのようだ。管理している人間の姿はない。ただ、最近も人の出入りはあったようで、床から人間の毛や剥がれ落ちた表皮と思しきものの匂いが漂ってくるのは察知できた。

そちらも美味そうだが、いかんせんネズミがうろついているので、迂闊に近付けない。機械の上の方にも糞や毛が落ちていたのだからネズミはこちらにも来るのだろうが、人間があまりいないので床の方で堂々とうろつけるのだろう。

残念ではあるがそちらは危険を冒してまで食うほどのことはないか。

なお、ネズミと言えばやたらとあちこち齧る厄介者ではあるが、どうやらここの設備はその辺りは対策済みらしく、コード類はネズミでは文字通り歯が立たないカバーがつけられているらしく、傷はついているものの破れてはいなかった。

この辺り、やはり技術がいくらかは進んでいる証拠かもしれないな。

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