JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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三学期の章

保管場所

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まあここが<別ルートの地球>かどうかは、実は大して問題ではない。私にとってはな。

人間ならそういう場合、

『どうすればいいんだ…?』

と呆然としたりということもあるだろうが、最悪、このままここで生きるのも私としては選択としてアリなのだ。

さりとて、ただ何もせずに諦めるというのも癪に障る。

という訳で、さらに探索を続けることにする。

ゴキブリの体にとっては広大といえるこの屋敷だが、それ故に快適でもある。人間にとって程よい気温に完璧に制御されているらしく、今の私にとってその点でも概ね快適だ。

ただ、閉められたドアが開けられない上に、やはり異様なほどの精度で作られたそれは、ゴキブリが通り抜けられるだけの隙間すらなく、順に部屋を見て回ろうとした私の邪魔をした。

明らかに高い気密性を意図した作りだ。部屋一つ一つがシェルターとして機能するようになっていると思われる。

「まったく。これでは話が盛り上がらんではないか……!」

誰に見せる訳でもないが、物語的な抑揚を確保できないことについて私は思わず愚痴を漏らした。

と、メタい話をしていても仕方ない。

とにかく把握できる部分だけでも把握に努めよう。

廊下を奔り抜け、さらに進む。

するとようやく、きちんと閉められずに隙間が開いたドアを見付けることができた。

「ここは……?」

それは物置と思しき部屋だった。今は使われていない、もしくは<予備>として備蓄されているのかもしれない家具や調度品及び、いわゆる<消え物>と称される消耗品の保管場所のようだ。

ただ、何やら慌ててそこに放り込んだのか、ロクに整頓もされていない様子だったがな。

ゴキブリにとっては身を潜めるに絶好の場所のようにも思えるが、先にも言ったようにやけに気密性の高い部屋の作りになっているから、ドアを閉められると逆に閉じ込められてしまう可能性も高い。

それは正直、好ましくない。

だが取り敢えずはもう少しゆっくりと確かめさせてもらおう。

雑然と置かれた物の隙間を通り抜け、奥へと進む。

すると、積み上げられた生活用品の陰に隠れるように、今度は石膏像や銅像、絵画といった美術品らしきものがやはり雑然と置かれているのが分かった。

しかもそれらは明らかに、本来なら美術館などで厳重に保管されているであろう名だたる作品ばかりだった。

いわゆる、<人類の財産>とか<世界の宝>とか言われるレベルのものだ。

ゴキブリの高性能な触角から得られる情報と私自身に蓄えられた知識が、それらが確かに<本物>であることを告げている。

「こんなところにこんな風に雑に保管されているということは、相当慌ててここに退避させた感じか。ふむ……」

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