JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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三学期の章

成長

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山下沙奈を部長として立て、自分達がそれを支えるというのは、こいつら自身がそういう風に変化したからだとも言えるだろう。以前のただオカルトに逃げ込み現実を見ないようにしていたこいつらとはまるで別人になってしまってたのだから。

まあ、実際にほぼ別人のようなものなのだがな。

それを、代田真登美も感じ取っていたのだった。こいつが最近、透視を行わなくなったのは、無理矢理そういうイベントを発生させて雰囲気作りをしなくてもよくなったからだというのもあったのである。

生真面目な性格ゆえにクラブをまとめるにはどうすればいいのかということを考えすぎて少々行き過ぎてしまっていたのだろう。しかしその必要ももはやない。

これでこいつは、中二病とやらを卒業出来るかも知れん。それが良いことかどうかという話もあるとしても、変化というものは成長の上ではつきものだ。

なお、普通の人間である代田真登美はともかく、玖島楓恋については今後も監視を続けなきゃならん。何しろこいつの体にはレゼヌゥケショネフォオアが封じられている。今は大人しくしているが、油断するなど論外。放っておいておかしな真似をされてもつまらんし。

その一方で、最近、玖島楓恋と貴志騨一成の距離が妙に近い。

別にその辺は勝手にしててくれて構わんが、貴志騨一成に対する羨望や嫉妬が半端なかったりもする。この吉泉きっせん中学校においては代田真登美と双璧をなす『空気を読まぬド天然な女』という評価もありつつも、男子生徒からは人気もあったからな。主に<驚異の胸囲>に対してだろうが。

貴志騨一成についても、ほんの数か月前とは受ける印象からしてすっかり別人だ。体型は相変わらずでも顔つきは精悍になり、いい男になった。その辺のチャラい小僧っ子に比べればもはや別次元の貫録だ。やはり男を変えるのは女なのだなとも思わせる。

肥土透に至ってはもはやただのイケメンでしかない。あの、根暗オカルトオタクはいったいどこへ行ってしまったのだ?という感じさえある。それでいて驕ることなく月城こよみと黄三縞亜蓮きみじまあれんの間に違和感なく収まっているのがまた愉快だ。一般的な人間の感覚からすればいずれはどちらかを選ぶべきだとしても、私としてはこれはこれでありだと思ってはいる。

その黄三縞亜蓮も、妊娠してることが噂として広まってしまったもののそんなことなどどこ吹く風で、最近ますます表情が穏やかになった。髪型をショートボブにして軽い印象にし、顔にも若干の肉がついて輪郭が丸くなったというのもあるが、それ以上に<母親の顔>になっていってるということだろう。

対して、新伊崎千晶にいざきちあきは、逆に凛々しい顔つきになった。決して愛想はよくないものの、髪も完全に地毛の黒髪に戻り、以前のギャル風だった面影はどこにもない。ややきつい印象があることから男子からの人気はパッとしないが、実は一年の女子を中心にファンが付きつつあるという話もある。

新入部員の一年生共はまだまだ海のものとも山のものともつかん有象無象ではあっても、こいつらもそのうち化けるかもしれん。

そんな、ひと癖もふた癖もある連中をまとめあげるのは苦労もあるだろう。しかしこいつらはちゃんと山下沙奈のことを大切に想っている。

親には恵まれずロクでもない人生を送ってきた山下沙奈も、すっかりいい顔で笑うようになった。その上で、並のベテラン主婦も顔負けなくらいに家の中のことも切り盛りする。そんなこいつが部長になるのは、まあ当然の成り行きとも言えるのか。

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