JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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夏休みの章

最終ステージ

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さて、黒幕が貴志騨一成きしだかずしげではなかったことも確認できたことだし、ケリをつけるとしようか。

と言ってもただ力尽くで叩き潰すというのも芸がないな。

それに、玖島楓恋も中途半端で終わるのは後味が悪かろう。

というわけで、教室のドアを開け、<最終ステージ>へと進む。

そうして教室へと入ってきた私達を、女子生徒は何も見えていない虚ろな目で見た。不穏な気配こそあれ、ボスとしてはいささか迫力に欠ける。

さらには、恐らくゲームとして創作物として他人の前に提示すれば、メリハリも盛り上がりもなく、それこそ嘲笑の的にしかならなかったであろう稚拙な出来。

思春期にありがちな<惑い>を、エルディミアンが表面だけ汲み取って形にしたようだな。

「さて、お前を倒してクリアだ。とっとと片付けるぞ」

私は冷淡にそう告げる。

「そろそろ終わりにしたいもんね」

と、月城こよみは、非常に雑なこのゲームに飽き飽きしており、さっさと終わらせようと気合いが入っている。

一方で、玖島楓恋の方は、

「さあ、かかってきなさい!」

などとノリノリである。

元々あまりゲームなどをよく分かっておらず、こだわりもなく、ただ誰かが企画し用意したレクリエーションとして単純に楽しんでいたようだ。茶番でも楽しめるというのは実はすごいことかもしれんがな。

まったく。その能天気な純粋さがもはや清々しいよ。

しかし、立ちはだかった私達の前で、その女子生徒の姿がみるみる変形へんぎょうし、巨大な屍魂となった。もうちょっと凝った演出もあるだろうにと思うものの、こいつの妄想ではこれが限度なのだろう。

だが―――――

「―――――む…!?」

だが、その辺りの出来に反して戦闘そのものは、思った以上にシビアだった。私の防御でも防ぎきれず、一撃で玖島楓恋のHPが大きく削られる。

「あ、ちょっと、ヤバイかも」

さすがの能天気も状況を理解し、膝をつきながら顔を歪めた。それでも、その姿がやけに艶かしいが。

などと言ってる場合ではないな。ここで回復役を失うというのはマズい。たぶん、セーブポイントのようなものがここまでなかったから、やられてしまうと最初からやり直しになるだろう。ボスマスがここで変わりないなら直接来れば済むが、さすがにランダムで変更される可能性もある。それは面倒だ。

できればもうここで片をつけてしまいたい。

<ゲーム>は終わりだ。

そこで、私は、刃物を重ね合わせたかのような自らの体を丸め、そのまま突っ込んでいった。

「ごおおおおおおっっ!!」

と爆音のような絶叫が上がる。ちょうど、屍魂が次の攻撃を繰り出そうとしたところにカウンターのような形で攻撃したからな。

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