JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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夏休みの章

ミッション開始

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夏休みといえど、教師は当然、平日には仕事があるから学校には来ているし、クラブ活動もあるから結構、生徒も来ている。しかも、自然科学部の部室がある校舎は、少子化によって減少した生徒数に伴ってできた空き教室を部室に転用した<部室棟>のような状態なので、授業がある時には人影もまばらだが、授業がなくクラブ活動がある時には逆に人の出入りが増えるので、なかなかスリリングではないかな。

で、ここで認識阻害を使えばいいのではないかという話だが、何故か上手く働かんようなのだ。このケモノの体は、人間の目には私達の体に見えていても、どうやらそれ自体が視覚情報を欺く認識阻害の一種らしく、『そう見える』だけのようだな。

故に、私はそれを破ることができても、未熟な月城こよみには上手くできないのだろう。

いやはや、分かりやすい<物理的な破壊力を持つ攻撃>にはそれなりに対応できるようになったが、こういう詐術的な力についてはまだまだか。

ま、なんにせよ、こうしていても仕方ないということで、月城こよみは覚悟を決め、部室のドアをそっと開け、廊下を窺う。

すると、ちょうど廊下には誰もいなかった。が、空き教室を利用した部室には、人の気配がある。その殆どは文科系のクラブなので運動系のそれほどは夏休み期間中の活動は積極的でなくとも、やってるところはやっている。確かこの階にあるのは、将棋部と手芸部とポップアート部、だったかな。結構頻繁に潰れたりまたできたりして入れ替わりがあるそうなので、私もいちいち把握はしていない。

元よりリソースの少ない人間の体に興味のない余計な情報はなるべく入れたくないのだ。

でもまあとにかく行動だ。

私は今、存在しない筈の人間(なにしろもう一人の月城こよみだからな)なので、余計にあまり人に見られる訳にもいかん。この格好だからさすがにすぐには誰か分からなくても、月城こよみのことをよく知る人間には分かってしまうだろうし。

教室の窓は、下半分が擦りガラスになっていて、座っていれば外はよく見えない。また、姿勢を低くすれば立っていても教室の中からは見えない。

という訳で、二人してダッシュする。さすがにそこは<力>を使って人間には出せない速度で走った。その様子は、まさに獣だっただろう。

だが同時に、人がいない筈の教室については、<ボス>とやらがいる可能性もあるので、瞬間的に中を覗き込んで確認もする。

いやはや。これはなかなか難易度が高いゲームだぞ。<スーパーケモケモ大戦ブラックΣ>そのものはこういう内容ではないようだがな。

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