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夏休みの章
上には上が
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その身に宿したクォ=ヨ=ムイの殆どを失い、私から見れば人間とほぼ変わらなくなった月城こよみだが、それでもエルディミアンごときに遅れはとらん。こいつはいわば、<邪神の落とし子>なのだ。下賤の化生などとはワケが違う。
綺勝平法源の一件で戦闘も経験し、腹も据わったこいつに<にわかヒーローもどき>が勝てる筈もなかった。
己の力を過信し考えなしに突っ込んでくる男の眼前に<見えない壁>を生み出すと、男はそれに派手に頭をぶつけ、「がっっ!!?」と声を上げながらその場に膝をついた。
いやはや、ここまでバカだとむしろ清々しいな。
月城こよみは少年らの意識を操作し公園から退避させて、猫も砂から引き揚げて逃がし、それから結界を張った。
手加減せずに男を叩きのめす為である。
「あなたは力を手にして有頂天になってるんでしょうけど、<力>ってのはそんな甘いものじゃありませんよ。上には上がいるんだから!」
「黙れえっっ!!」
力を手にしたばかりでその使い方もロクに分かってない男を手玉にとるくらい、今の月城こよみにとっては造作もなかった。
性懲りもなく飛び掛かってくる男の突進をすっと体を捻ることで躱し、同時に男の死角からするりと掌を滑らせて顎を捉え、容赦なく突きあげた。
「がふっ!?」
喚きながら飛び掛かったところに下顎を突き上げられたものだから、男は自分の歯で自らの舌の先端を噛み千切ってしまう。
「あ”あ”あ”あ”あ”がーっっ!!」
「あ、ごめんなさい!」
男の尋常じゃない悲鳴に思っていた以上のダメージを与えてしまったことに月城こよみは思わず謝罪の言葉を口にしてしまった。
だがそれが逆に男にとってはバカにされたと感じたのだろう。顔を真っ赤にし血まみれの口を押えながら、
「ぎーっっっ!!!」
などと訳の分からん声を上げつつ月城こよみの顔目掛けて、黒塗りベンツをペシャンコに叩き潰した一撃をくりだす。
が、それさえ当たらなければ意味がない。
もっとも、当たったところで大したダメージも与えられんだろうがな。
男の拳をまたもするりと躱しつつ、今度は勢いで下がった頭の後ろに肘を叩きこむと、隕石でも落ちたかのように男の頭が地面にめり込んだ。
土下座どころか地面に頭を突っ込んだ状態の男に月城こよみは言う。
「中学生の女の子にさえ、あなたは勝てないんです。それが現実です。力で解決しようとすれば、それを上回る力を前にするとどうにもならなくなるんです。
大人だったらそのくらい分かるんじゃないんですか? しっかりしてください」
中学生の小娘に諭されて、男がどう思ったのか興味はあったんだが、この時もう、完全に気を失っていたらしい。
まったくもってやれやれだ。
綺勝平法源の一件で戦闘も経験し、腹も据わったこいつに<にわかヒーローもどき>が勝てる筈もなかった。
己の力を過信し考えなしに突っ込んでくる男の眼前に<見えない壁>を生み出すと、男はそれに派手に頭をぶつけ、「がっっ!!?」と声を上げながらその場に膝をついた。
いやはや、ここまでバカだとむしろ清々しいな。
月城こよみは少年らの意識を操作し公園から退避させて、猫も砂から引き揚げて逃がし、それから結界を張った。
手加減せずに男を叩きのめす為である。
「あなたは力を手にして有頂天になってるんでしょうけど、<力>ってのはそんな甘いものじゃありませんよ。上には上がいるんだから!」
「黙れえっっ!!」
力を手にしたばかりでその使い方もロクに分かってない男を手玉にとるくらい、今の月城こよみにとっては造作もなかった。
性懲りもなく飛び掛かってくる男の突進をすっと体を捻ることで躱し、同時に男の死角からするりと掌を滑らせて顎を捉え、容赦なく突きあげた。
「がふっ!?」
喚きながら飛び掛かったところに下顎を突き上げられたものだから、男は自分の歯で自らの舌の先端を噛み千切ってしまう。
「あ”あ”あ”あ”あ”がーっっ!!」
「あ、ごめんなさい!」
男の尋常じゃない悲鳴に思っていた以上のダメージを与えてしまったことに月城こよみは思わず謝罪の言葉を口にしてしまった。
だがそれが逆に男にとってはバカにされたと感じたのだろう。顔を真っ赤にし血まみれの口を押えながら、
「ぎーっっっ!!!」
などと訳の分からん声を上げつつ月城こよみの顔目掛けて、黒塗りベンツをペシャンコに叩き潰した一撃をくりだす。
が、それさえ当たらなければ意味がない。
もっとも、当たったところで大したダメージも与えられんだろうがな。
男の拳をまたもするりと躱しつつ、今度は勢いで下がった頭の後ろに肘を叩きこむと、隕石でも落ちたかのように男の頭が地面にめり込んだ。
土下座どころか地面に頭を突っ込んだ状態の男に月城こよみは言う。
「中学生の女の子にさえ、あなたは勝てないんです。それが現実です。力で解決しようとすれば、それを上回る力を前にするとどうにもならなくなるんです。
大人だったらそのくらい分かるんじゃないんですか? しっかりしてください」
中学生の小娘に諭されて、男がどう思ったのか興味はあったんだが、この時もう、完全に気を失っていたらしい。
まったくもってやれやれだ。
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