JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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夏休みの章

ネット弁慶

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『こんな世界はクソだ! 俺が破壊してやる!!』

ネット上で威勢よくそういうことを叫んでる奴は、それこそごまんといる。だが大抵は口先だけのネット弁慶でしかなく、くだらん戯言を垂れ流して他人を嫌な気分にさせているだけで、大した実害はないだろう。

だから私もいちいちそんなものに係わったりはしない。

が、石脇佑香いしわきゆうかにとっては格好の暇潰しの<玩具おもちゃ>だった。

「あらあら~。元気いいね~、どうしたのかな、ボクちゃん?」

もう完全に初手から相手の感情を逆撫でする気しかない言葉選びで、幼い少女のアバターがそいつに絡む。石脇佑香のアバターだ。

と、これ以降のやり取りなど、ネットを眺めていれば腐るほどありふれているので面倒臭いから敢えて割愛する。それより問題は、石脇佑香に絡まれて相手が本気でキレてしまったことだ。

「お前! ぶっ殺してやるからな!! お前の住所はもう特定してる! 今から行ってぐっちゃぐちゃに犯してマソコに腐った卵を詰め込んで糸で縫ってやる!!」

とかなんとか。

私も暇だったので、ネットに入り込んでそのやり取りを眺めてたんだが、よくもまあそんな口先だけの戯言を恥ずかしげもなく並べられるものだと呆れていたのだった。

なにしろ、私には相手の言ってることが本当に口から出まかせのハッタリだと分かってしまうからだ。ハッキングによって住所を特定した的なことを言っていたが、そもそも特定することが不可能なのだ。

ネットワーク機器でも端末でもない石脇佑香に割り振られた特定の情報などなく、サーバーと通信する為に必要な情報も全て実在しないでっち上げのデタラメなので、たとえ通信のログを確認しても辿り着くことができないのである。

もっとも、たとえ特定できたとしても今の石脇佑香が相手では、人間など手も足も出んだろう。電気と電波を自在に操るということは、その気になれば感電死させることも、マイクロ波で体内から焼き殺すことだってできるのだ。電気を通す物体が近くにあれば容易く。

だから今のこの社会の中では、人間は石脇佑香に近付くことすら敵わない。本体は脆く割れやすいただの鏡でも、近付くこともできないのではどうすることもできない。

しかも、ネットワークそのものと同化しているこいつにとって地球上の距離は意味を成さず、数万キロ離れたところからICBMを撃ち込まれたところで、それを乗っ取って無力化するだろう。

いつの間にかこいつは、それだけの化生となっていたのだ。

そんなこいつにただのネット弁慶ごとき、何ができるというのやら。

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