JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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夏休みの章

異能力者

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この世界には、私のような<超越者>や<化生>がいるのと同時に、人間でありながらこちらの世界に片足を突っ込んでる奴らもいる。石脇佑香いしわきゆうかもある意味ではそういう人間の一人だ。

と言っても、人間としての肉体を失っている以上は、既に化生の類だがな。

そうではなくて、人間の肉体を有したままで異能を使える者がいるということだ。

そういう連中は一般には<超能力者>や<異能力者>をはじめとした様々な呼称で呼ばれているらしい。

で、その手の連中の中には、化生を狩ることを生業としている者もいた。

まあそれはさて置いて、実を言うと、私は以前にも言った通り、同時に複数存在することができるんだが、これはつまり、<月城こよみ>以外にもクォ=ヨ=ムイとしての記憶や力に気付かないままに人間として生きている<私>が他にもいるということでもある。

数十人単位で。

もっとも、そいつらを起こしてどうこうしようとかいうつもりは私にはない。複数の私が同時に存在したところで、同時にできることが増えるというだけでしかなく、私の<力>の総量が増える訳ではないからだ。

私の本体そのものは一つであり、こうやって現世に干渉している私は、ある意味ではインターフェースでしかないのである。

例えるなら、PCに複数のモニターを繋いでいくつものプログラムを表示させ同時に作業していても、PCそのものの能力が上がる訳ではないといった感じだろうか。

ただ、そうなってくると、月城こよみの事例と同じようなものが他にも生じる可能性もゼロではないということでもある。

無自覚にクォ=ヨ=ムイとしての力の一部が漏れ出てしまい、<異能力者>として覚醒してしまうという事例がな。

クォ=ヨ=ムイとしての意識に目覚める以前の月城こよみのように、本当に些細な程度のものならさほど大きなことにはならないものの、時折、それなりの力が使えてしまう者が現れることもあった。

それでも、クォ=ヨ=ムイとしての意識にまで目覚めてしまうことは滅多にない。千年に一度レベルといった感じか。

で、今回は、そういう<私の一人>が引き起こした騒動について触れることになる。

もっとも、その引き金となったのは、石脇佑香だったが。



以前にも言った通り、石脇佑香にとっては既に、ネットワークの中が<現実世界>のようなものになっていた。

いつものようにテレビの電波を受信してアニメを見つつ、ネットワーク内を徘徊する。

そうするとまあ、いろんな人間に遭遇する訳だ。

この時、石脇佑香が出会ったのも、そんな人間の一人だっただろう。

「こんな世界はクソだ! 俺が破壊してやる!!」

とか何とか、両目を縫い付けられて潰された悪趣味なアバターで吼えてるという、まあネットワーク上ではさほど珍しくもない、典型的な<ネット弁慶>という奴であった。

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