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金髪碧眼の美少女
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そうだ。いくら不顕性感染者が表面上は普通の人間であっても、その体内には恐ろしいCLSウイルスを宿しており、感染者を生かしたままウイルスを除去する方法が存在しない現状では、たとえ実際に不顕性感染者が発見されたとしてもリヴィアターネから出すことは叶わない。
何しろ、ウイルスを死滅させる為には人間なら数秒で即死するレベルの放射線を浴びせるか、摂氏三百度以上の高温で数十秒焼くしかないのだから。また、人間の体内にウイルスが存在していなかったとしても、その体や持ち物や、その人間の移動に使った機器にほんの数個のウイルスが残っているだけでも感染が広がってしまう可能性が高い。不顕性感染者を連れ出したりすれば、リヴィアターネの二の舞になるのがほぼ確実だからである。
だが、まさにそれに該当する人間が、今、メルシュ博士=アリスマリアHの眼前にいたのだった。
「お嬢ちゃん、お名前は?」
愛想笑い丸出しの笑顔で問い掛ける彼女に対し、少女ははっきりと応えた。
「サーシャ」
緩くウェーブしたプラチナブロンドに青い瞳と、まさしく人形のような愛らしい十歳くらいの少女だった。まぎれもなく健康な人間だ。
正直、CLSを発症していない人間には興味はなかった。とは言え、貴重なサンプルであることにも間違いはない。その少女の背後に立っていたメイトギアが冷徹な視線を向けてくる。
「彼女を人間の社会に戻したい。それについて専門家の見解を窺いたい」
メイトギアにしては珍しく愛想のないその様子も、メルシュ博士は全く意に介していなかったようだ。まあ、彼女の下にいるリリアテレサやリルフィーナを見ていればそれほど特別でもないようにも見えるのかも知れないが。
そのメイトギアはコゼット2CVという、本来は愛くるしい笑顔が評判の機種だった筈だが、何故かその美点を失ってしまっているようだった。
しかしそれはまあ余談である。現在大切なのはサーシャという少女の方だ。
「はっきり言わせてもらうと、不可能かな。少なくとも現時点の技術では」
専門家としての忌憚のない見解を単刀直入に口にする彼女に対して、コゼット2CVもサーシャも、特に動揺した様子は見せなかった。ロボットであるコゼット2CVが動揺しないのは当然としても、サーシャの方が気にしていないのは、少女が人間社会というものを知らないからなのだろう。少女は生まれてこの方、メイトギアとCLS患者以外の存在に触れてきておらず、今回初めて自分以外の生身の人間(?)に出会っただけなのだから。
何しろ、ウイルスを死滅させる為には人間なら数秒で即死するレベルの放射線を浴びせるか、摂氏三百度以上の高温で数十秒焼くしかないのだから。また、人間の体内にウイルスが存在していなかったとしても、その体や持ち物や、その人間の移動に使った機器にほんの数個のウイルスが残っているだけでも感染が広がってしまう可能性が高い。不顕性感染者を連れ出したりすれば、リヴィアターネの二の舞になるのがほぼ確実だからである。
だが、まさにそれに該当する人間が、今、メルシュ博士=アリスマリアHの眼前にいたのだった。
「お嬢ちゃん、お名前は?」
愛想笑い丸出しの笑顔で問い掛ける彼女に対し、少女ははっきりと応えた。
「サーシャ」
緩くウェーブしたプラチナブロンドに青い瞳と、まさしく人形のような愛らしい十歳くらいの少女だった。まぎれもなく健康な人間だ。
正直、CLSを発症していない人間には興味はなかった。とは言え、貴重なサンプルであることにも間違いはない。その少女の背後に立っていたメイトギアが冷徹な視線を向けてくる。
「彼女を人間の社会に戻したい。それについて専門家の見解を窺いたい」
メイトギアにしては珍しく愛想のないその様子も、メルシュ博士は全く意に介していなかったようだ。まあ、彼女の下にいるリリアテレサやリルフィーナを見ていればそれほど特別でもないようにも見えるのかも知れないが。
そのメイトギアはコゼット2CVという、本来は愛くるしい笑顔が評判の機種だった筈だが、何故かその美点を失ってしまっているようだった。
しかしそれはまあ余談である。現在大切なのはサーシャという少女の方だ。
「はっきり言わせてもらうと、不可能かな。少なくとも現時点の技術では」
専門家としての忌憚のない見解を単刀直入に口にする彼女に対して、コゼット2CVもサーシャも、特に動揺した様子は見せなかった。ロボットであるコゼット2CVが動揺しないのは当然としても、サーシャの方が気にしていないのは、少女が人間社会というものを知らないからなのだろう。少女は生まれてこの方、メイトギアとCLS患者以外の存在に触れてきておらず、今回初めて自分以外の生身の人間(?)に出会っただけなのだから。
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