メルシュ博士のマッドな情熱

京衛武百十

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コルフュンフ

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なお、この時代にはバッテリーは、軍用などの特殊なものを除いて非常に安価でかつ十分に高性能な為、子供用の玩具でさえ備えている。また給電は無線方式が一般的であり、小型で電力消費の小さい時計等の機械に至っては、その辺を飛び交っている野良電波を拾って電気に変えて動作するので、もはや充電する必要さえない。

また、タブレットのような汎用小型端末など、市販されているものなら紙のノートとさほど変わらない値段で、文具売り場で重ねて売られている。

その一方で、生物としての人間は、二十一世紀頃とそれほど変化していない。便利な生活に慣れ過ぎて体力が低下する等の懸念は長らくされていたが、そういう部分についてはスポーツなどを積極的に行うことで補っていた。食事についても、見た目や味、食感等は大きく変わっていない。敢えて人間らしさのようなものを失わないようにという無意識が働いたのか、サプリメントやエネルギーバーのような栄養補助食品も普及はしているがそれだけで生活するような人間はむしろ少数派だった。ただし、メルシュ博士は完全にサプリメントとエネルギーバーに頼り切った食生活をしているが。食事に時間が割かれるのが嫌なのだ。

アリスマリアHも、当然、その感じである。エネルギーバーを口に咥え、今日も実験の真っ最中であった。

昆虫型のロボットをコルフュンフの部屋に放ち、それを餌と思ったコルフュンフに追わせて運動能力を調べていた。その結果、心臓の機能を回復させられたCLS患者は健康な人間と遜色ない運動能力を見せるのが確認された。しかも、自らの肉体の損傷というものを考慮しない為、力そのものは常人より強かった。いわゆる<火事場の馬鹿力>状態が常に発揮されているという感じだろう。それ故、昆虫型のロボットを捕まえようと手を伸ばすが力加減がおかしいので、固い壁などに指を強く打ち付けて骨折することもよくあった。しかも痛みを感じない上に学習能力もないから指が折れたままでまた同じようにするのだ。そのせいでコルフュンフの右手は今、ギプスで固定されている。

同じようなことは、コルクアトレやコルシンクにも見られた。このことにより、心臓の機能を回復させることは必ずしもCLS患者の肉体を健全に保つことには良いことばかりではないことが確認された。なにしろ、メルシュ博士のクローンでCLSに感染・発症した状態のまま何も手を加えず経過観察しているコルゼンにはそこまでのことが見られなかったからである。動きが緩慢で、激しく手を壁にぶつけるような動きがそもそもできないからだ。なので動きの速い動物は自力ではなかなか捕まえられないが、ダンゴムシに似たニ十センチほどの動きの遅い虫のようなものは自分で捕らえて食べることができた。同様に芋虫のようなものも捕らえることができたのだった。 

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