絵里奈の独白

京衛武百十

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カレー作り

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どうせ広い部屋に移ってもきっとっみんな同じところに集まっちゃうんだろうなって感じる理由の一つが、玲那の様子だった。せっかく座椅子を買ってきたのにそれを使わずに彼に寄り添うみたいにして沙奈子ちゃんのことを見守ってるんだもんな。

彼に甘えるのと沙奈子ちゃんを見守るのとを同時にしようと思ったらそうなったんだろうけど。

ただその時の姿が、やっぱり<お父さんが大好きで甘えてる娘>っていう風にしか見えなくて、ぜんぜん、ヤキモチとか感じなかった。それどころか、もうそれが当たり前になってきてるのが分かる。

そんな感じで時間が過ぎて、そろそろ夕食の用意をと思い、私は立ち上がった。

「今日はカレーにします」

わざわざそう言ったのにも訳がある。実は、彼がいつも作るカレーが、冷凍野菜を茹でてお湯が湧いたらそこに固形のルウを入れて溶かすだけの、彼曰く<手抜きカレー>だったから、私はルウから作るカレーを、沙奈子ちゃんと彼に食べさせてあげたいと思ったんだ。その為の材料も買ってきた。

時間短縮の為に、私はいつも、ルウと具を同時に作るようにしてる。もちろんこれは二口コンロがあって同時に手早く作業できるくらいに慣れてるからっていうのが前提のやり方だから、不慣れなここのキッチンで、しかもコンロが一口しかなかったから避けてきたけど、何度か使って慣れたし、カセットコンロを使えば二口コンロと同じだからね。挑戦してみることにしたんだ。

私がキッチンに立つと、沙奈子ちゃんも隣に立って、一緒にやる気満々だった。だから手伝ってもらうことにした。

まずは材料の下ごしらえからだ。まな板とかを置くスペースはカセットコンロを置くと使えなくなるから、その必要がないように先に全部済ませておく。そして沙奈子ちゃんに野菜とか肉とかの用意をしてもらってる間に私はルウを作り始めた。

鍋にバターを入れて中火で溶かして焼き色を付け、それから弱火にしてサラダ油を入れ、いい感じに温度が下がったところで小麦粉を投入。これでルウらしいとろみをつける。それを鍋に焦げ付かせないようにゴムベラでしっかり掬い上げるようにしてかき混ぜ続ける。ホントの弱火にしてとにかく色は付くけど焦げ臭くならないように気を付ける。

これを、具材の用意を終わらせた沙奈子ちゃんに任せて、私は、カセットコンロを用意して玉ねぎを炒めることにした。あめ色になるまで炒めた玉ねぎを使う為だ。これも、手も目も離せない作業なので集中してやらないといけない。

玉ねぎを炒めてる間にルウがいい感じの色になってきたのを見て、火を止めて沙奈子ちゃんにカレー粉を入れてもらって、冷めるまでさらにかき混ぜてもらった。沙奈子ちゃんは私がお願いしたとおり、すごく丁寧にかき混ぜてくれてたから焦げ付きもなくいい感じに仕上がった。これでルウは完成だ。

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