絵里奈の独白

京衛武百十

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ベランダ

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フックに固定した物干し竿にサンシェードを二重にして掛け、それも風が吹いても飛ばないように傑作バンドで物干し竿に固定してしまう。下の方もベランダの手すりに固定する。これで風も大丈夫。さらに、その両脇にもそれぞれ物干し竿用のフックとかベランダの手すりを利用してサンシェードを吊るして固定して、ベランダそのものを完全に覆ってしまった。

これならもう、サンシェードを破らないとベランダに侵入することもできない。外からなんてそれこそ部屋の中は見えない。まあ、夜、そのが暗くなって部屋の明かりを点けると少し見えちゃうけど、それはまた対処する。

「私の部屋のベランダもこうしてるんです。これなら洗濯物も分からないし、風で洗濯物が飛んでいくこともないし。鳩とかが入ってこないようにする為でもあるんですけど。あと、下に空き缶とか並べて置いたら入ろうとした時に音がするからもっといいと思います」

彼にそう説明しながら今度は、窓を乾いた雑巾で拭く。そして汚れを取ったところで霧吹きで水を吹きかけて、そこに目隠し用のシートを貼り付けた。何度もやってるから自分でも慣れたものだと思う。

「このシート、ガラス破り対策用にもなってるんですよ。これでもう外からは殆ど見えません」

って言った時には思わずドヤ顔になってた気がする。だけど沙奈子ちゃんも彼も、玲那まで「お~!」って声を上げて拍手をしてくれた。

女なのにいたるさんを差し置いて一人で作業をしてしまったのはちょっと申し訳ない気分もありつつ、沙奈子ちゃんの為だもんね。必要なことなんだ。それにやってること自体は簡単なものだし、やり方を見てもらったから今のが傷んで交換する必要が出てくれば彼が自分でできるよね。

サンシェードを二重にしたこともあって部屋は少し暗くなったかもだけど、これまでずっとカーテンを閉めてたそうだから実質的な明るさはそんなに変わらないと思う。何よりベランダに洗濯物が干せる。

作業が終わって落ち着いて、今度は沙奈子ちゃんの午後の勉強を見ることになった。今はひっ算をしてるところみたい。二年も学校に通ってなかったことで遅れてた勉強が、かなり取り戻せてきたんだね。こういうところでも彼がコツコツと彼女の為にいろいろ努力してたんだなって感じる。

午後の勉強が終わると、いつもは買い物に行くパターンだそうだけど、今日はもう買い物は終わってるし、沙奈子ちゃんは裁縫セットを出してきて、昨夜の続きをすることにしたようだった。

私もスイッチが入る感じで気持ちが切り替わる。

それからは、沙奈子ちゃんもすごい集中力をみせた。ちゃっちゃって手を動かしてどんどん縫い上げていくからみるみる仕上がっていったのだった。

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