絵里奈の独白

京衛武百十

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恥ずかしいって

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『絵里奈はもっと慌てるかなと思ったのにな~』

部屋の奥で胡坐をかきながら不満そうに唇を尖らせてた玲那にはちょっと苦笑いを浮かべつつも、私はやっぱり落ち着いてた。

「私ももっと恥ずかしいって感じるかなって思ってた。でも実際にいたるさんに見られたら、ホントにぜんぜん平気だったのよね。不思議。だけどそれはやっぱりいたるさんだからかな」

そんな風に言った時、自分でも気付いてしまった。彼が私達のことを<いやらしい目>で見てないからこそ、素直に彼の前では自分をさらけ出したいっていう気持ちがあったってことに。何も繕ってない、何も着飾ってない、素のままの私を。

彼にだからこそ見てほしいって。

もちろん恥ずかしいっていう気持ちが少しもないかって言ったらそれも違うけど、恥ずかしいって気持ちよりも見てほしいって気持ちの方が大きいって言うか。

だけどその時、

「ねえ、恥ずかしいって、何が?」

って不思議そうに問い掛ける声が。

沙奈子ちゃんだった。沙奈子ちゃんがきょとんとした顔で私と彼を交互に見ながら問い掛けてきた。

「え…、と」

彼は返答に困って言い淀んでた。どう説明すればいいのか分からなかったんだと思う。だから私が代わりに応えた。

「よその人に裸を見られたら恥ずかしいけど、私達は家族だから平気って話だよ」

必ずしも家族だから平気って訳じゃないのは分かってる。だけどこの時、沙奈子ちゃんに説明するにはこれが一番かなと思ったんだ。そして彼女も、「そっか…!」って納得した顔をしてくれた。

沙奈子ちゃん自身、他人の前では気軽に裸になったりしない。ちゃんとその辺りはわきまえてる。だから『他人の前で裸になるの恥ずかしいこと』というのは分かってくれたんだと思う。

そんなこんなで落ち着いて、今度は彼がお風呂に入ることになった。

私も玲那ももう彼の前ですべてをさらけ出してしまったから平気だけど、彼自身がまだそこまで割り切れてなかったみたいだから、私達は莉奈りなを手にしてそちらに集中するとにして、彼の方には意識を向けないようにした。

その間に彼はさっとお風呂に入ってた。

彼がお風呂に入ってる間に、私は型紙用の方眼紙を出してきて沙奈子ちゃんに言った。

「ねえ、沙奈子ちゃん、莉奈のドレスを作ってみない?」

私の言葉に、彼女は躊躇うことなく。

「作ってみたい…!」

って応えてくれた。だからさっそく、型紙を作る作業を始めたんだ。

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