絵里奈の独白

京衛武百十

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玲那ばっかり

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その日、玲那は私の部屋に泊まっていって、二人でいろいろ話をした。

香保理かほりのこと、玲那の過去のこと、沙奈子ちゃんのこと、いたるさんのこと。

ベッドで向かい合って横になって、夜遅くまで話し合った。そして抱き合って眠った。

こうして二人だけで支え合うのももうすぐ終わりかもしれない。これからは四人で支え合って生きていくんだ……。



翌日、社員食堂に行くとすぐに彼も来てくれた。だから玲那と一緒に手を振る。

「沙奈子ちゃん、どう?。寂しがってる?」

その話し方がもう完全に家族のそれになってた。本当に、離れて暮らしてる娘がお父さんに妹の様子を聞くみたいな感じで。

「少しね。お姉ちゃん、早く帰ってくればいいのにって言ってたよ」

彼も、ホントの娘に話し掛けるみたいに応える。でも私はそんな様子を見てちょっと妬けちゃった。

「ホント、玲那ばっかりズルい」

って思わず唇を尖らせる。だけど二人はそんな私のこともふわっとした感じで受け入れてくれてるのが分かった。

本当は私も玲那みたいに気楽に彼のところに泊まったりしたかった。けれど志緒里しおりがいるからそんなに気軽には外泊できない。彼女を放っておけないから。

だから、泊りがけでテーマパークに行った時だって志緒里を連れて行った。バッグの中にいてもらったけど、どうしても持って入れないところ以外はずっと一緒だった。

という訳で、私は決心した。

「今度の金曜日、私もお邪魔していいですか?」

今度の金曜日、玲那はまた彼のところに<帰る>ってことだから、私も思いきらせてもらった。志緒里も連れて週末は四人、いや、志緒里と莉奈と果奈も合わせてで一緒に過ごす。

すると彼も、当たり前みたいに「いいよ」って言ってくれた。その時の笑顔がまた優しくて、何だか胸がいっぱいになった。

ああ、やっぱり私、彼のことが好きなんだって……。

結婚とかそういうのはまだピンとこない。だけど彼のことは好き。本当に好き。自分がこんな気持ちになるなんて、ほんの何ヶ月か前までは思ってもみなかった。でもこの気持ちは事実。

そしてそんな私と玲那に向かって、彼はポケットから取り出したものを差し出して言った。

「じゃあこれ、鍵だから。沙奈子には僕が帰って来るまで決して玄関を開けないように言い聞かせてるから、無くすと入れないかも知れないし、気を付けてね」

それは、玲那が金曜日にも泊まりに来るということで彼が用意してくれたものだった。玲那が私に目配せしてくる。

『絵里奈が受け取って』

って言ってくれてるのが分かったのだった。

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