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沙奈子ちゃんの秘密
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スーパーでは、地下の食品売り場でホットケーキミックスとかマーガリンとか牛乳とか冷凍商品とかを買い、一階の生活用品売り場では石鹸とか洗剤とかも買ってた。
それは普通だったからただ見守ってたけれど、ベビー用品売り場に入っていった時、「あれ?」と思ってしまった。
『どうしてベビー用品?』
そんなことを考えている私の前で山下さんは、オムツを手に取った。それは、<ビッグよりも大きいサイズ>っていうパンツタイプのオムツだった。
「それはもしかして、沙奈子ちゃんのですか…?」
私は思わず、山下さんの耳元でそう訊いてしまった。
すると彼は黙って頷いてから、静かに、
「帰ってから改めて話すよ」
と言った。
私も玲那も戸惑ってしまったけど、でもこの時にはもう察してしまってた。
スーパーから帰る途中、沙奈子ちゃんと一緒に歩く私の後ろで、玲那が先に聞いてたらしい。
「沙奈子ちゃん、おねしょするんですか?」
って。
それに対して彼は変に誤魔化さず黙って頷いてくれたって。
「やっぱり…。そういうのあるんじゃないかって思ってたんです。沙奈子ちゃん、辛かったんですね…」
玲那はそう言ったらしいけど、実は事情はもう少し複雑だったみたい。
部屋に戻って買ったものを整理した後、沙奈子ちゃんと彼は、並んで私と玲那の前に座った。そして沙奈子ちゃんの頭をそっと撫でながら山下さんは静かに語りだした。
「二人が気付いたとおり、沙奈子は今でもおねしょをするんだ…。
でもそれは、実は僕のところに来てから始まったことなんだよ。病院で検査もしてもらったけど、体には何も異常はなかった。精神的なものだろうってことだったんだ。
だけど、精神的なものだっていうことだったら、僕のところに来てからそうなったのはどういうことなんだろうって僕は思った。沙奈子は本当は僕のところにいるのが嫌なのかなとか考えたりもしたよ…」
彼のその言葉に、玲那はただ黙って彼を見詰めて、私は思わず両手で口を覆ってた。
彼はなおも続ける。
「だけど、二人も昨日会った、大希くんのお父さんの山仁さんが言ってくれたんだ…。
沙奈子がおねしょをするようになったのは、確かにストレスが原因かもしれないけど、ストレスというのはその人にとって幸せなことが起こった時にもかかるものなんだって。
例えば、念願のマイホームを手に入れてものすごく嬉しいっていうのも、医学的に見ればストレスがかかってる状態らしい。だから、沙奈子は幸せ過ぎておねしょをするようになったんじゃないかって……」
それは普通だったからただ見守ってたけれど、ベビー用品売り場に入っていった時、「あれ?」と思ってしまった。
『どうしてベビー用品?』
そんなことを考えている私の前で山下さんは、オムツを手に取った。それは、<ビッグよりも大きいサイズ>っていうパンツタイプのオムツだった。
「それはもしかして、沙奈子ちゃんのですか…?」
私は思わず、山下さんの耳元でそう訊いてしまった。
すると彼は黙って頷いてから、静かに、
「帰ってから改めて話すよ」
と言った。
私も玲那も戸惑ってしまったけど、でもこの時にはもう察してしまってた。
スーパーから帰る途中、沙奈子ちゃんと一緒に歩く私の後ろで、玲那が先に聞いてたらしい。
「沙奈子ちゃん、おねしょするんですか?」
って。
それに対して彼は変に誤魔化さず黙って頷いてくれたって。
「やっぱり…。そういうのあるんじゃないかって思ってたんです。沙奈子ちゃん、辛かったんですね…」
玲那はそう言ったらしいけど、実は事情はもう少し複雑だったみたい。
部屋に戻って買ったものを整理した後、沙奈子ちゃんと彼は、並んで私と玲那の前に座った。そして沙奈子ちゃんの頭をそっと撫でながら山下さんは静かに語りだした。
「二人が気付いたとおり、沙奈子は今でもおねしょをするんだ…。
でもそれは、実は僕のところに来てから始まったことなんだよ。病院で検査もしてもらったけど、体には何も異常はなかった。精神的なものだろうってことだったんだ。
だけど、精神的なものだっていうことだったら、僕のところに来てからそうなったのはどういうことなんだろうって僕は思った。沙奈子は本当は僕のところにいるのが嫌なのかなとか考えたりもしたよ…」
彼のその言葉に、玲那はただ黙って彼を見詰めて、私は思わず両手で口を覆ってた。
彼はなおも続ける。
「だけど、二人も昨日会った、大希くんのお父さんの山仁さんが言ってくれたんだ…。
沙奈子がおねしょをするようになったのは、確かにストレスが原因かもしれないけど、ストレスというのはその人にとって幸せなことが起こった時にもかかるものなんだって。
例えば、念願のマイホームを手に入れてものすごく嬉しいっていうのも、医学的に見ればストレスがかかってる状態らしい。だから、沙奈子は幸せ過ぎておねしょをするようになったんじゃないかって……」
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