151 / 255
後は、お父さんが
しおりを挟む
『みんなで一緒に住んだらいい』
沙奈子ちゃんの素敵な提案に、私も玲那もすっかり乗り気だった。沙奈子ちゃんがそれを望んでるなら、拒む理由は何もない。
だから私達は、目を合わせて頷いていた。みんな思ってることは一緒だと感じて、揃って山下さんを見た。思わずニヤリと笑みがこぼれる。沙奈子ちゃんまで玲那そっくりの悪い顔で笑ってた。
「後は、お父さんが決めるだけだよね」
まるで打ち合わせしたみたいに声がハモった。
思いがけない攻撃に彼も気圧されるのが見えたけど、でも山下さんも負けてなかった。
「分かりました。じゃあ、みんなで住む家を本気で探さなきゃね」
だって。
これはもう、本決まりってことでいいよね。
ただ、新居を探すには条件がなかなか厳しかった。一番重要なのは、今の沙奈子ちゃんの学校の校区内ということ。私達の都合で転校とかさせたくない。せっかく今の学校に馴染めてるんだから。
あと、山下さんは集合住宅じゃなくて借家とかを希望してるらしかった。三人でお金を出し合えば結構な物件を見付けられそうとは思ったけど、万が一、何かの理由で働けなくなったりしたら、あっという間に破綻するからそれはマズいかなということで、除外。
少し大きい地震があったくらいで倒壊するようなのも困る。それじゃ沙奈子ちゃんを守れない。
「個室とかは私は要らないですけどね~」
玲那はそう言うし私もそれは同意見だけど、沙奈子ちゃんがこれから思春期に入っていくとさすがにまったくプライバシーがないというのも考えものかな~。
「いざ探してみるとなかなか無いものですね~」
石生蔵さんが来るまでの間、取り敢えず山下さんのパソコンや私達のスマホでそれぞれ物件を探してみたけど、さすがに条件が厳しいのかこれというのがなかった。
でも、彼が見付けたものに、かなり条件に近いものが。
「4LDKで二十五坪、家賃は十万円でリノベーション済み。でも、築年数が四十年っていうのは引っかかるかな。耐震補強とかどうなんだろう。あと、学校までも今より遠くなるし…。
もうちょっと待ってみる感じかなあ…」
確かにかなりいい感じだけど、『これだ!』というインスピレーションは私にも来なかった。
「ですね~」と、思わず玲那と声を合わせてしまう。
すると沙奈子ちゃんが悲しそうな顔で、
「おうち無いの?」
って訊いてきた。その様子に胸がずきんと痛む。
「うん、ごめんね」
「まだ無いみたい」
玲那と一緒に謝ってしまった。
そして山下さんが沙奈子ちゃんを真っ直ぐに見て言った。
「でも、今は見付からなくても、いつか見付かると思うよ。見付かるまで探すから、待っててね」
穏やかだけど真剣さも感じる、丁寧な言葉だった。そんな彼を見詰め返して、沙奈子ちゃんも、
「分かった。待ってる」
って言ってくれたのだった。
沙奈子ちゃんの素敵な提案に、私も玲那もすっかり乗り気だった。沙奈子ちゃんがそれを望んでるなら、拒む理由は何もない。
だから私達は、目を合わせて頷いていた。みんな思ってることは一緒だと感じて、揃って山下さんを見た。思わずニヤリと笑みがこぼれる。沙奈子ちゃんまで玲那そっくりの悪い顔で笑ってた。
「後は、お父さんが決めるだけだよね」
まるで打ち合わせしたみたいに声がハモった。
思いがけない攻撃に彼も気圧されるのが見えたけど、でも山下さんも負けてなかった。
「分かりました。じゃあ、みんなで住む家を本気で探さなきゃね」
だって。
これはもう、本決まりってことでいいよね。
ただ、新居を探すには条件がなかなか厳しかった。一番重要なのは、今の沙奈子ちゃんの学校の校区内ということ。私達の都合で転校とかさせたくない。せっかく今の学校に馴染めてるんだから。
あと、山下さんは集合住宅じゃなくて借家とかを希望してるらしかった。三人でお金を出し合えば結構な物件を見付けられそうとは思ったけど、万が一、何かの理由で働けなくなったりしたら、あっという間に破綻するからそれはマズいかなということで、除外。
少し大きい地震があったくらいで倒壊するようなのも困る。それじゃ沙奈子ちゃんを守れない。
「個室とかは私は要らないですけどね~」
玲那はそう言うし私もそれは同意見だけど、沙奈子ちゃんがこれから思春期に入っていくとさすがにまったくプライバシーがないというのも考えものかな~。
「いざ探してみるとなかなか無いものですね~」
石生蔵さんが来るまでの間、取り敢えず山下さんのパソコンや私達のスマホでそれぞれ物件を探してみたけど、さすがに条件が厳しいのかこれというのがなかった。
でも、彼が見付けたものに、かなり条件に近いものが。
「4LDKで二十五坪、家賃は十万円でリノベーション済み。でも、築年数が四十年っていうのは引っかかるかな。耐震補強とかどうなんだろう。あと、学校までも今より遠くなるし…。
もうちょっと待ってみる感じかなあ…」
確かにかなりいい感じだけど、『これだ!』というインスピレーションは私にも来なかった。
「ですね~」と、思わず玲那と声を合わせてしまう。
すると沙奈子ちゃんが悲しそうな顔で、
「おうち無いの?」
って訊いてきた。その様子に胸がずきんと痛む。
「うん、ごめんね」
「まだ無いみたい」
玲那と一緒に謝ってしまった。
そして山下さんが沙奈子ちゃんを真っ直ぐに見て言った。
「でも、今は見付からなくても、いつか見付かると思うよ。見付かるまで探すから、待っててね」
穏やかだけど真剣さも感じる、丁寧な言葉だった。そんな彼を見詰め返して、沙奈子ちゃんも、
「分かった。待ってる」
って言ってくれたのだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる