絵里奈の独白

京衛武百十

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好き嫌い

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今度の土曜日が沙奈子ちゃんの運動会ということで、私は自分がすごく張り切ってるのを感じてた。なんだか自分の娘の運動会に気分が盛り上がってるお母さんって感じかも知れない。って言うか、そのままなのか。

だから水曜日、お昼に山下さんに尋ねてた。

「運動会のお弁当のことですけど、沙奈子ちゃん、何か嫌いなものとかありますか?」

私の質問に、彼は穏やかな表情で応えてくれた。

「どうしても食べられないものってないみたいだけど、ツナが苦手みたいなんだ。あと、辛いものもたぶんダメ」

その言葉に、玲那が反応する。

「へえ、ツナが苦手って、ちょっと珍しいですね。何か原因があるんですか?」

確かに。子供って割とツナが好きっていうイメージがあったから意外だった。私も割と好きだった気がするし。それにも山下さんは躊躇わず答えてくれる。

「さあ、僕も知らない。でもどうしても食べられないわけじゃないから、別にうるさく言う気はないんだ」

そうか。どうしても食べられないってわけじゃないんだ。だったらその程度の好き嫌いは誰にでもあるよね。

「大丈夫ですよ。せっかくの運動会のお弁当に苦手なのって嫌じゃないですか。好きなものだけにしようと思います。だから、沙奈子ちゃんが好きなものは何ですか?」

うん、そうだよ。運動会のお弁当に好きじゃないものが入ってたらそれだけでテンションが下がっちゃうかもしれない。好き嫌いをなくすのも大事かもしれないけど、特別な日くらいはいいよね。

そんなことを考えてる私の前で、彼が顎に手をやって思い出しながら話し始める。

「確か、スパゲティ、トマト、煮干し、コロッケ、ハンバーグ、アジフライ、白身魚のフライ、とかかな。お弁当のおかずになりそうなものだとそんなところかも。あと、肉よりは魚が好きかな。だから唐揚げよりは魚のフライが好きって感じだと思う」

なるほどなるほど。

「分かりました。それだけ聞けば十分です。頑張ります!」

思わずガッツポーズをしながら応えた。自分でも浮かれてるのが分かる。玲那はクスクス笑ってた。だけどそれが嫌じゃない。彼女も喜んでくれてるのが分かるから。

「でも沙奈子ちゃん、魚が好きなのにツナは苦手って、やっぱり面白いですね」

玲那が彼に向かってそう言った。私もちょっとそれは思ったけど、肉は好きだけどハムとか加工肉は苦手っていう人も知り合いにいたな。『そのまま肉で食べたらおいしいのに、わざわざ変な加工するとか意味分からない』とか言ってた気がする、その感じかも知れない。

でも、それは置いといて、これでお弁当のメニューを考えられる。楽しみにしててね、沙奈子ちゃん!。

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