108 / 255
お父さん
しおりを挟む
『山下さんに声を掛ける勇気を出せたのは、絵里奈の為っていうのもあったからなんだよ』
玲那のその言葉に、私はハッとなってた。それって、どういう意味なの?。
彼女を見詰める私に、玲那はにっこりと笑ってくれた。
「何か新しい出会いでもあれば気が紛れるかなっていうのもあったんだ。山下さんを選んだのは兵長に似てたからだけど、絵里奈にとっても何かきっかけになればっていうのもあったんだよ」
え…?、でも、そんな……。
「そんな…。だって、玲那、山下さんのことが好きなんでしょ……?」
何とかそれだけを言った私に、彼女は優しく答えてくれた。
「山下さんのことは好きだよ。でもさ、また家に行ってみて改めて思ったんだ。私、山下さんのこと、彼氏とか旦那とかにしたいっていう意味で好きなんじゃないって。やっぱり、お兄ちゃんとかお父さんの方がしっくりくるって言うか。
勘違いしないでよ?。別に絵里奈に遠慮してるとかじゃないから。私の正直な気持ちなんだ。
彼氏とか旦那とかになってほしいっていう気持ちがまったくないかって言ったらそれも嘘になるけどさ、でもやっぱり何か違うんだ。私の中では、山下さんがお父さんで、絵里奈がお母さんで、沙奈子ちゃんと私が二人の娘っていう光景が一番しっくりくる感じなんだ。
山下さん、言ってくれたんだよ。『本当に伊藤さんも山田さんもすごいですね。僕にはできないことをどんどんやる。沙奈子とだってこんなにすぐに仲良くなれた。僕なんか足元にも及ばないなって思いました』って。
もちろんそれは、山下さんが先に沙奈子ちゃんの気持ちを解きほぐしてくれてたから、そこにうまく私達が入れただけっていうのは分かってる。山下さんがいなかったら、私も絵里奈も沙奈子ちゃんには受け入れてもらえてなかったと思う。
だけど、山下さんは私達のことを『すごい』って言ってくれたんだ。山下さんの方がずっとすごいのに、私達のことを『すごい』ってさ。
私、それを聞いた時、『ああ、お父さんに褒められた時ってきっとこんな感じなんだな』って思ったんだ。
山下さんって、ほんとにすごいよね。いくら姪っ子だからっていきなり預けられた子を受け入れて、あんないい子に育てられるんだよ?。
私、私ね、山下さんがお父さんだったらいいなって思ったんだ。私なんかじゃ全然敵わないすごい人なのに、私や絵里奈のことも『すごい』って褒めてくれるんだよ!。
お父さんって、本当はそういうものなんじゃないかな?。大きくて強くて子供じゃ全然敵わないのに、でも子供のことも『すごい』って認めてくれるんだよ!。
山下さんがお父さんだったら、私、幸せになれる気がするんだ!」
玲那のその言葉に、私はハッとなってた。それって、どういう意味なの?。
彼女を見詰める私に、玲那はにっこりと笑ってくれた。
「何か新しい出会いでもあれば気が紛れるかなっていうのもあったんだ。山下さんを選んだのは兵長に似てたからだけど、絵里奈にとっても何かきっかけになればっていうのもあったんだよ」
え…?、でも、そんな……。
「そんな…。だって、玲那、山下さんのことが好きなんでしょ……?」
何とかそれだけを言った私に、彼女は優しく答えてくれた。
「山下さんのことは好きだよ。でもさ、また家に行ってみて改めて思ったんだ。私、山下さんのこと、彼氏とか旦那とかにしたいっていう意味で好きなんじゃないって。やっぱり、お兄ちゃんとかお父さんの方がしっくりくるって言うか。
勘違いしないでよ?。別に絵里奈に遠慮してるとかじゃないから。私の正直な気持ちなんだ。
彼氏とか旦那とかになってほしいっていう気持ちがまったくないかって言ったらそれも嘘になるけどさ、でもやっぱり何か違うんだ。私の中では、山下さんがお父さんで、絵里奈がお母さんで、沙奈子ちゃんと私が二人の娘っていう光景が一番しっくりくる感じなんだ。
山下さん、言ってくれたんだよ。『本当に伊藤さんも山田さんもすごいですね。僕にはできないことをどんどんやる。沙奈子とだってこんなにすぐに仲良くなれた。僕なんか足元にも及ばないなって思いました』って。
もちろんそれは、山下さんが先に沙奈子ちゃんの気持ちを解きほぐしてくれてたから、そこにうまく私達が入れただけっていうのは分かってる。山下さんがいなかったら、私も絵里奈も沙奈子ちゃんには受け入れてもらえてなかったと思う。
だけど、山下さんは私達のことを『すごい』って言ってくれたんだ。山下さんの方がずっとすごいのに、私達のことを『すごい』ってさ。
私、それを聞いた時、『ああ、お父さんに褒められた時ってきっとこんな感じなんだな』って思ったんだ。
山下さんって、ほんとにすごいよね。いくら姪っ子だからっていきなり預けられた子を受け入れて、あんないい子に育てられるんだよ?。
私、私ね、山下さんがお父さんだったらいいなって思ったんだ。私なんかじゃ全然敵わないすごい人なのに、私や絵里奈のことも『すごい』って褒めてくれるんだよ!。
お父さんって、本当はそういうものなんじゃないかな?。大きくて強くて子供じゃ全然敵わないのに、でも子供のことも『すごい』って認めてくれるんだよ!。
山下さんがお父さんだったら、私、幸せになれる気がするんだ!」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
待ち遠しかった卒業パーティー
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢アンネットは、暴力を振るう父、母亡き後に父の後妻になった継母からの虐め、嘘をついてアンネットの婚約者である第四王子シューベルを誘惑した異母姉を卒業パーティーを利用して断罪する予定だった。
しかし、その前にアンネットはシューベルから婚約破棄を言い渡された。
それによってシューベルも一緒にパーティーで断罪されるというお話です。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる