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お母さん
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山下さんのアパートから家に帰る途中、バスの中で私は泣いていた。莉奈と別れたことが自分で想像していた以上に辛かったから……。
普通の人なら『たかが人形くらいで大袈裟な』って感じると思う。でも、私にとってドールは家族みたいなものだった。玲那を長女として、志緒里、莉奈の三姉妹って感じかな。自分がつくづくドールに依存してたんだなって改めて思い知らされた。
そんな私を、玲那はそっと抱き締めて体を撫でてくれてた。本当なら玲那と山下さんの距離を今まで以上に詰める為っていうのが一番の目的だった筈なのに、私はまた、自分のことばっかりで……。
ごめん…、本当にごめん……。玲那……。
それでも、私の部屋に二人で戻った頃には何とか落ち着いてた。泣いたら少し楽になった。そうだよ。心配しなくても沙奈子ちゃんと山下さんなら莉奈を大切にしてくれる。決して乱暴に扱ったりしない。それでも万が一、うっかり莉奈に怪我をさせてしまったりっていうことはあるかもしれない。でもそれはもう、仕方のないことなんだ。沙奈子ちゃんと山下さんに任せた以上は。保育園とかに子供を預けるのって、こんな感じなのかな。なんて思ったり。
「夕食つくるけど、おなかへってる?」
気を取り直して玲那にそう尋ねると、「いや~、あんまり」という返事が返ってきた。当たり前か。お昼にカルボナーラをあれだけ食べた上におやつまで食べてたらね。正直、私も全然だった。
だから軽くうどんにした。二人でそれをすする。
すると玲那が不意に話し掛けてきた。
「絵里奈ってさ、沙奈子ちゃんのお母さんみたいだよね」
「…え?、そ、そうかな…」
急にそんなこと言われたからちょっと焦ってしまった。でも、悪い気はしない。自分でもそう感じてたから。
彼女がさらに言う。
「二人で料理作ってた時の絵里奈と沙奈子ちゃんがすごく楽しそうで幸せそうで、山下さんと一緒に泣きそうになってたんだよ」
って。
でもそれだけじゃなかった。山下さんと何を話したのかを、彼女は語ってくれた。
「私さ、山下さんに話したんだ。香保理が亡くなった時の絵里奈の様子。あの時の絵里奈は、本当に抜け殻みたいだった……。
絵里奈、私の前では明るく振る舞おうとしてたけど無理してるのはバレバレだったもんね。莉奈と志緒里が来てからは少しずつマシになっていったみたいだけど、それでもね。
私が山下さんに声を掛ける勇気が出せたのは、絵里奈の為っていうのもあったからなんだよ」
「え…?。それってどういう……?」
普通の人なら『たかが人形くらいで大袈裟な』って感じると思う。でも、私にとってドールは家族みたいなものだった。玲那を長女として、志緒里、莉奈の三姉妹って感じかな。自分がつくづくドールに依存してたんだなって改めて思い知らされた。
そんな私を、玲那はそっと抱き締めて体を撫でてくれてた。本当なら玲那と山下さんの距離を今まで以上に詰める為っていうのが一番の目的だった筈なのに、私はまた、自分のことばっかりで……。
ごめん…、本当にごめん……。玲那……。
それでも、私の部屋に二人で戻った頃には何とか落ち着いてた。泣いたら少し楽になった。そうだよ。心配しなくても沙奈子ちゃんと山下さんなら莉奈を大切にしてくれる。決して乱暴に扱ったりしない。それでも万が一、うっかり莉奈に怪我をさせてしまったりっていうことはあるかもしれない。でもそれはもう、仕方のないことなんだ。沙奈子ちゃんと山下さんに任せた以上は。保育園とかに子供を預けるのって、こんな感じなのかな。なんて思ったり。
「夕食つくるけど、おなかへってる?」
気を取り直して玲那にそう尋ねると、「いや~、あんまり」という返事が返ってきた。当たり前か。お昼にカルボナーラをあれだけ食べた上におやつまで食べてたらね。正直、私も全然だった。
だから軽くうどんにした。二人でそれをすする。
すると玲那が不意に話し掛けてきた。
「絵里奈ってさ、沙奈子ちゃんのお母さんみたいだよね」
「…え?、そ、そうかな…」
急にそんなこと言われたからちょっと焦ってしまった。でも、悪い気はしない。自分でもそう感じてたから。
彼女がさらに言う。
「二人で料理作ってた時の絵里奈と沙奈子ちゃんがすごく楽しそうで幸せそうで、山下さんと一緒に泣きそうになってたんだよ」
って。
でもそれだけじゃなかった。山下さんと何を話したのかを、彼女は語ってくれた。
「私さ、山下さんに話したんだ。香保理が亡くなった時の絵里奈の様子。あの時の絵里奈は、本当に抜け殻みたいだった……。
絵里奈、私の前では明るく振る舞おうとしてたけど無理してるのはバレバレだったもんね。莉奈と志緒里が来てからは少しずつマシになっていったみたいだけど、それでもね。
私が山下さんに声を掛ける勇気が出せたのは、絵里奈の為っていうのもあったからなんだよ」
「え…?。それってどういう……?」
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