絵里奈の独白

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
107 / 255

お母さん

しおりを挟む
山下さんのアパートから家に帰る途中、バスの中で私は泣いていた。莉奈りなと別れたことが自分で想像していた以上に辛かったから……。

普通の人なら『たかが人形くらいで大袈裟な』って感じると思う。でも、私にとってドールは家族みたいなものだった。玲那を長女として、志緒里しおり、莉奈の三姉妹って感じかな。自分がつくづくドールに依存してたんだなって改めて思い知らされた。

そんな私を、玲那はそっと抱き締めて体を撫でてくれてた。本当なら玲那と山下さんの距離を今まで以上に詰める為っていうのが一番の目的だった筈なのに、私はまた、自分のことばっかりで……。

ごめん…、本当にごめん……。玲那……。



それでも、私の部屋に二人で戻った頃には何とか落ち着いてた。泣いたら少し楽になった。そうだよ。心配しなくても沙奈子ちゃんと山下さんなら莉奈を大切にしてくれる。決して乱暴に扱ったりしない。それでも万が一、うっかり莉奈に怪我をさせてしまったりっていうことはあるかもしれない。でもそれはもう、仕方のないことなんだ。沙奈子ちゃんと山下さんに任せた以上は。保育園とかに子供を預けるのって、こんな感じなのかな。なんて思ったり。

「夕食つくるけど、おなかへってる?」

気を取り直して玲那にそう尋ねると、「いや~、あんまり」という返事が返ってきた。当たり前か。お昼にカルボナーラをあれだけ食べた上におやつまで食べてたらね。正直、私も全然だった。

だから軽くうどんにした。二人でそれをすする。

すると玲那が不意に話し掛けてきた。

「絵里奈ってさ、沙奈子ちゃんのお母さんみたいだよね」

「…え?、そ、そうかな…」

急にそんなこと言われたからちょっと焦ってしまった。でも、悪い気はしない。自分でもそう感じてたから。

彼女がさらに言う。

「二人で料理作ってた時の絵里奈と沙奈子ちゃんがすごく楽しそうで幸せそうで、山下さんと一緒に泣きそうになってたんだよ」

って。

でもそれだけじゃなかった。山下さんと何を話したのかを、彼女は語ってくれた。

「私さ、山下さんに話したんだ。香保理かほりが亡くなった時の絵里奈の様子。あの時の絵里奈は、本当に抜け殻みたいだった……。

絵里奈、私の前では明るく振る舞おうとしてたけど無理してるのはバレバレだったもんね。莉奈りな志緒里しおりが来てからは少しずつマシになっていったみたいだけど、それでもね。

私が山下さんに声を掛ける勇気が出せたのは、絵里奈の為っていうのもあったからなんだよ」

「え…?。それってどういう……?」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...