絵里奈の独白

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
84 / 255

裏方

しおりを挟む
月曜日。また今日から仕事が始まる。また山下さんに会える。正直、それを目当てに会社に行ってるのは否めなかった。もちろん仕事もちゃんとするけど。

玲那れいなは朝からご機嫌だった。山下さんの家にお邪魔できたことがよっぽど嬉しかったんだろうな。まあ、私もだけど。

あの、少し寒々しい感じさえする生活感の乏しい部屋で二人で暮らしてるんだろうなと思うと、胸が締め付けられる気もする。食事はちゃんととってるとは聞いてたけど、栄養のバランス的な点ではどうなんだろう。と思う以上に、二人にできたての温かい食事を食べてもらいたいという気持ちがすごく湧き上がってた。

玲那も、料理はいくらかはできるけど、あまり得意とは言えなかった。そもそも好きじゃない。両親に奴隷のように使われて用意させられていたことで仕方なく身に付けたものだったこともあって、彼女にとっては家事自体が辛い思い出だったから。

それに対して、私は決して家事は嫌いじゃなかった。むしろ綺麗に片付いていくのを見るのは好きだ。だから時々、玲那の部屋を掃除したりもする。行くたびに目茶目茶になってる部屋を片付けるのも、楽しみでさえあった。

だからもし、玲那が山下さんと結婚するようなことがあっても、私が家事を手伝いに行こうと思ってた。新婚のお宅にお邪魔するのは野暮だとしても、そこは二人にデートにでも行ってもらって、その間に私は沙奈子ちゃんと一緒にお片付けごっこで遊ぶとかいう感じで。

なんてことを夢想してたのに、どうやらそれはまだ先のことになりそうかな。玲那が彼とお付き合いしたり結婚したりっていう気がないって言うんじゃ、ね。

……じゃあ、私が山下さんと結婚すればいいじゃん。

そんな考えが頭をよぎるけれど、その結論を出すのはまだ早い。玲那と彼が実際にどうなって行くのかもまだ分からないし。

私はただ、玲那や沙奈子ちゃんに幸せになってほしいだけ。その為のお手伝いをしたいだけ。山下さんのことは確かに好きだけど、男性として好きだっていうのは自覚してしまったけど、でも、大丈夫。私は<主役>になりたいんじゃない。私は、脇役でいい。ううん、<黒子>でいい。<裏方>でいい。玲那と沙奈子ちゃんと山下さんの幸せな暮らしを陰で支える、家政婦みたいな存在でいいの。

だいたい、<主役>なんて私には似合わない。本当の私はこんなに地味だし、ドール大好きな根暗女だし……。

って、そんなこと考えてても仕方ない!。今は仕事仕事!。お昼にはまた彼に会えるんだからね。

それまではちゃんと自分の役目を果たさなきゃ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...