絵里奈の独白

京衛武百十

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広場

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山下さんに向かって二人で頭を下げると、彼がすごく恐縮してるのが分かった。そして、慌てて、

「こちらこそ、よろしくお願いします」

って頭を下げてくれた。

正直、こんなに人の行き交う中でするようなことじゃない気もしたけど、だけどちゃんと伝えたいって思ったから。

自分達のしてることがちょっと恥ずかしいって気が付いてしまって私達はみんなで照れ笑いになってしまったのだった。



それからはまた四人で歩いて、いろんな店を見て回った。

でも、二時を過ぎた頃だったかな。沙奈子さなこちゃんの様子が変わってきてるのが分かった。目がトロンとしてて、動きも緩慢っていうか。

「ちょっとそこで休もうか」

山下さんもそれを察したみたいで、商店街の中の小さな公園のベンチを指差した。そこに座った沙奈子ちゃんは、明らかに眠そうに見えた。

人が多くて疲れちゃったのかもしれない。

そんな沙奈子ちゃんに、彼は酔い止めの薬を飲ませながら、

「沙奈子がちょっと疲れてきてるみたいだから、僕達は少し休んだら帰るよ」

って言った。

そっか…。そうだよね。沙奈子ちゃん、人が多いところとか苦手そうだし。

酔い止めが効き始めるまで一休みすることにして、それでお開きってことになった。

「じゃあそれまでアイスでも食べてゆっくりしましょう」

玲那れいながそう言ってアイスを買ってきた。

沙奈子ちゃんを挟む形で、私と山下さんが座って、玲那は山下さんの隣に座った。うん。自然な感じでいい形になれたと思った。

だけど、すごく眠そうな貌でアイスを食べる沙奈子ちゃんは、私じゃなくて彼の方にもたれかかった。

その姿を見て、玲那も私も自然と笑顔になってた。

「やっぱり最後は山下さんなんですね」

「ちょっと妬けちゃいます」

正直な気持ちだった。さっきまであんなに私に懐いてくれてたのに、疲れてぼんやりしてくると当たり前のように山下さんに甘えるんだなって。それがちょっぴり淋しいなって。

でも、当然だよね。彼女はずっと彼と一緒に暮らしてきたんだから。固く閉ざされてた彼女の心をほぐしてくれたのは、山下さんなんだから。

それが羨ましくて、嬉しくて、また胸がキュンってなってしまった。

沙奈子ちゃん…。沙奈子ちゃん……。

良かった。本当に良かった。

あなたは生まれてからずっと辛くて苦しい中にいたみたいだけど、もう、大丈夫だと思う。山下さんと一緒ならきっと幸せになれる。

私達も、その為の力になりたい。彼だけだと分からないこととか力が及ばないことがあっても、私達が力になるよ。

だから幸せになってね、沙奈子ちゃん。

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