絵里奈の独白

京衛武百十

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沙奈子ちゃん

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<調査兵団の制服>をキラキラした目で見詰めてたことで、案の定、山下さんに玲那の趣味がバレてしまったようだった。

「まさかこんなところでオタクバレするとは思いませんでした……」

店を出た後、玲那は顔を真っ赤にして頬を押さえてた。

「でもでも、私の一番好きなキャラのコスが飾ってたからつい我慢できなくて~」

と言いながら身悶えするみたいに頭をぶんぶん振る。でも、玲那自身がバラしてしまったのなら、私もそれに乗るしかなかった。

「玲那は兵長にぞっこんだったもんね~」

私の言葉に、山下さんも『へえ』といった感じの顔をした。やっぱり知ってたんだ。さすがに有名なアニメだったからかな。

「玲那が山下さんに声を掛けようって言いだしたのも、ちょっと兵長に似てたからだもんね」

そう言うと今度は『え!?』って感じの顔になった。すると玲那が焦ったように私の肩を掴んでガクガクと揺さぶってくる。

「ぎゃーっ!。それは言わないでって言ったのに~!!」

まるでアニメみたいな玲那の反応。そう、彼女が山下さんのことが気になりだした本当のきっかけのことは当面の間は内緒にしておこうということになってた。だけど、もうここまでバレたんだもん、いいよね。

でもやっぱり、

「ごめんごめん許してぇ~!」

と、私も笑いながらだけど謝ってた。

そんな私と玲那のやり取りを、山下さんは呆然って感じで見てた。だけど何かに気付いたみたいにハッとした顔になったのに気付いた時、私もその理由が分かった。

「沙奈子ちゃん、沙奈子ちゃんが笑ってくれてる!」

思わず声を上げると、玲那も「え!?」と沙奈子ちゃんの方に向き直った。

私達の視線の先には、両手で口を押えてクスクスと笑う沙奈子ちゃんの姿があった。

ああ…、ああ……!、沙奈子ちゃん…、沙奈子ちゃん……!。

「沙奈子ちゃ~ん、嬉しいぃ~。大好きだよ~」

私は、自分でも何をしてるのか分からないうちにその場に膝をついて、彼女を抱き締めてしまっていた。しっかりと、でも包み込むように柔らかく。

この時、はっきりと確信した。私は沙奈子ちゃんのことが好きなんだ。玲那が山下さんのことを好きになったように、私は海に行く特に最初に会った瞬間から彼女のことが好きになったんだ。

きっかけは、山下さんから聞いた話で香保理かほりや玲那の姿を重ね合わせてしまったっていうのもあるかもしれない。沙奈子ちゃんの姿が、私の部屋にいるドールの<莉奈>に似ていたからというのもあるのかもしれない。でも今は、沙奈子ちゃんが好きなの。香保理や玲那の代わりじゃなくて、沙奈子ちゃんが……!。

きゅっと抱き締めてくる私を、彼女も嫌がる風でもなく受け入れてくれてた。それがまた嬉しくてたまらなかった。

その私と沙奈子ちゃんを、玲那がさらに抱き締めてくれたのだった。

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