絵里奈の独白

京衛武百十

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関心

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『僕は沙奈子のことが一番好きだ』

山下さんが躊躇うことなくはっきりとそう言ってくれたことで私は改めて彼のことを『いいな』って思った。ここであれこれ誤魔化して口ごもってしまうような人だと、玲那のことは任せられない。

玲那も、そう言った彼のことを嬉しそうに見詰めてた。彼女も、自分に遠慮したりして言葉を濁すような人じゃないからこそ彼のことが好きなんだろうな。沙奈子ちゃんを一番に考えられる人だからこそ、沙奈子ちゃんを大切にできる人だからこそ好きなんだ。

だから私達も頷いた。『大丈夫、山下さんが一番好きなのは沙奈子ちゃんなんだよ』って伝えたくて。

すると沙奈子ちゃんの表情が、ふわっと柔らかくなるのが分かった。すごく嬉しそうに照れくさそうに微笑わらって、山下さんにぎゅーっと抱きついた。

この時、沙奈子ちゃんは、自分がどれだけ山下さんから大切に想われてるのかっていうのを実感できたんだって気がした。そんな彼女の姿を見てると、また涙が溢れそうになった。玲那の目にも涙が滲んでた。

しばらくして落ち着いたみたいで、私達はまた歩き出してた。山下さんの手をしっかりと掴む沙奈子ちゃんの後を、私と玲那もついていった。

でもその時、ハッと気付いたみたいに彼が振り返って私達に問い掛けてきた。

「そう言えば二人はどこか行くところがあるんじゃないのかな?」

当たり前みたいに四人で一緒に歩いてたけど、確かに私達は別にその為にきたんじゃないんだった。でも、玲那が言う。

「別に何も決めてなかったんですよ。二人で出掛けて後は適当にってことで。だから迷惑じゃなかったらこのままご一緒させてもらえたらな~、なんて思ってたりするんですけど、ダメですか?」

すると、沙奈子ちゃんに確認を取ろうとするみたいに彼女を見た山下さんに向かって、沙奈子ちゃんが穏やかな表情のままで頷くのが分かった。まるで、『いいよ』って言ってくれたみたいにも見えた。

それが何だか私達のことを認めてくれたみたいにも見えて、また胸にぐっと来てしまった。

そんな私達に向かって、彼は言った。

「今日はこれから、洋裁専門店に二人で行くところだったんだ。二人さえ良かったら一緒に来てくれてもいいよ」

その言葉に、私はハッとなって「え?」と声を上げてしまった。それに続けて、

「山下さん、洋裁に興味あるんですか?」

って尋ねてしまったら、彼は今度は少し慌てた感じで、

「いやいや、僕じゃなくて沙奈子がね」

って訂正した。ああ、そういうことか!。

「沙奈子ちゃん、洋裁に興味あるんだ?」

私の代わりをするように玲那がそう訊いてくれたのだった。

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