絵里奈の独白

京衛武百十

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流れ

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私の話が終わったのを感じたのか、玲那れいなも加わってきた。

「私が知ってるパターンは、一見するとすごく真面目で優等生って感じだったんだけど、とにかく何か気に入らないことがあるとすぐキレる奴で。しかもそのキレ方が尋常じゃないの」

そこまで言ったところで、頭を押さえて「はあ~」って深い溜息を吐いた。これまでにも何度か、他愛ない雑談の中で聞かされた話で、私は少しホッとしていた。だからそのまま私も乗っかって、

「あ、それ、叔父さんも言ってた。そういうパターンもあるって。あれこれ言われるのが嫌だから表面だけはいい子ぶってるんだけど、急に癇癪起こすって感じ」

って言ったところに、玲那も指で宙を指して、

「そうそうそれそれ。私の中学の同級生にまさにその感じのがいて、それに目を付けられてほんと地獄でした。

しかもそういうのに限って教師とかの前ではいい顔してて、贔屓されるんです。だから教師に相談しても私が悪いってことにされて、まともに話も聞いてもらえませんでしたよ。しかも私の父まで、『お前が弱いからつけ込まれるんだ。もっと強くなれ』みたいなこと言うだけで…」

そこまで言って、玲那の表情がふと悲しげなそれに変わった。『まさか…!』と思ったけど、止められなかった。

「強くなれって言うんなら具体的に何をどうやって強くなればいいのかヒントくらいくれてもいいのに、ただ、『強くなれ』としか言わないんですよ。だから私は思ったんです。ああこれは、具体的なことは何も思い付かないけど、とりあえずアドバイスっぽいこと言っておいたら親としてのメンツが保たれるって考えてるやつだって。

だから私は、今でも父のことが苦手です。口ばっかりのダメ男の見本みたいなものですね。母の方はまだ慰めたりとかしてくれましたけど、基本的に父の言いなりのイエスマンだから、尊敬はできません」

と、苦笑いを浮かべながら肩をすくめてた。けれどそのまた後で、

「でもこんなこと言ってても、自分も結婚して子供を育てたら両親と同じことをしてしまうんだろうなあっていう予感もあるんです。だから、結婚とか子供を持つことにちょっと不安もあって…」

って言いながら目を逸らしてた。

その時に玲那が語った内容に、私は正直、胸を撫で下ろしていた。<それ>だったら別に大丈夫だったから。もしかしてこの流れのままに玲那の<本当の過去>を打ち明けるんじゃないかと冷や冷やしてた。いずれは話さないといけないと思うけど、さすがにこんなところじゃ……。

なんとかもうそっちの話で進める為にも私も流れに逆らわなかったのだった。

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