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お世話
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週末。仕事が終わってそのまま、玲那は意気揚々と出掛けて行った。すごい行動力だと思う。どこにあれだけのエネルギーがあるんだろうって不思議に感じることもある。
私の方は、一人で静かに志緒里や莉奈と一緒に過ごした。
志緒里は、香保理が亡くなった後で出逢った、香保理にそっくりなドールで、見かけた瞬間にもう自分を抑えることができなくてそのままお迎えした。ローンは大変だったけど、それももうすぐ終わる。
莉奈は、香保理がまだ生きていた頃にやっぱり一目惚れしてお迎えしたドールだった。
だけど、私は元々あまり器用な方じゃなかったこともあって、志緒里をお迎えしてからはどうしても彼女の方に意識が傾いてしまって、莉奈についてはちゃんと構ってあげられなかったのが辛かった。莉奈のことも好きなのに、どうして上手くできないんだろう…。って、玲那の前で泣いたこともある。玲那はそんな私を抱き締めて、
「大丈夫だよ。莉奈も分かってくれるから」
と言ってくれたりもした。そんな玲那の支えもあってここまでなんとかやってこれたけど、でももう、きちんとしなくちゃいけないって最近は思ってた。
それで気付いたの。
『莉奈って、やっぱり沙奈子ちゃんに似てる……』
実は沙奈子ちゃんと初めて会った時も思った。『あれ?、莉奈に似てる?』って。それを改めて実感したって言うか。そのことに気付いてからは、私の中である想いが膨れ上がってきてた。
『沙奈子ちゃんになら、莉奈を任せられるかも……』
正直言ってそれは、何の根拠もないただの直感だった。論理的に客観的に根拠を示せるほど、私はまだ沙奈子ちゃんのことを知らない。だけどそう感じるの。たぶんそれは、玲那が山下さんに感じたのと同質のもの。理屈じゃない。
だけど今はまだ無理だと思うのも事実。今はまだきっと、沙奈子ちゃんに受け入れてもらえない。その時期が来るまでは、何とか私の方で頑張らなくちゃ。
本来、人間ほどは手間のかからない筈のドールでさえそんな風に思うくらいだから、私には子供を生んで育てる能力なんてないと思ってた。私みたいのが子供を生んだりしたら、きっとその子を不幸にしてしまう。それに加えて男性嫌いだったから、私は一生、結婚なんてしないと思ってた。
玲那もそうなのかと思ってたけど、山下さんと出逢ったことで彼女は変わったと思う。毎日、社員食堂で彼と楽しそうに話す(と言うか実際には一方的に話し掛けてるだけだけど)彼女を見ると、お似合いのカップルなんじゃないかって思うの。
明るくはきはきしてる彼女と、落ち着いて彼女を受け止めてくれる彼と。
この頃はまだ、私はそんな風に思ってたのだった。
私の方は、一人で静かに志緒里や莉奈と一緒に過ごした。
志緒里は、香保理が亡くなった後で出逢った、香保理にそっくりなドールで、見かけた瞬間にもう自分を抑えることができなくてそのままお迎えした。ローンは大変だったけど、それももうすぐ終わる。
莉奈は、香保理がまだ生きていた頃にやっぱり一目惚れしてお迎えしたドールだった。
だけど、私は元々あまり器用な方じゃなかったこともあって、志緒里をお迎えしてからはどうしても彼女の方に意識が傾いてしまって、莉奈についてはちゃんと構ってあげられなかったのが辛かった。莉奈のことも好きなのに、どうして上手くできないんだろう…。って、玲那の前で泣いたこともある。玲那はそんな私を抱き締めて、
「大丈夫だよ。莉奈も分かってくれるから」
と言ってくれたりもした。そんな玲那の支えもあってここまでなんとかやってこれたけど、でももう、きちんとしなくちゃいけないって最近は思ってた。
それで気付いたの。
『莉奈って、やっぱり沙奈子ちゃんに似てる……』
実は沙奈子ちゃんと初めて会った時も思った。『あれ?、莉奈に似てる?』って。それを改めて実感したって言うか。そのことに気付いてからは、私の中である想いが膨れ上がってきてた。
『沙奈子ちゃんになら、莉奈を任せられるかも……』
正直言ってそれは、何の根拠もないただの直感だった。論理的に客観的に根拠を示せるほど、私はまだ沙奈子ちゃんのことを知らない。だけどそう感じるの。たぶんそれは、玲那が山下さんに感じたのと同質のもの。理屈じゃない。
だけど今はまだ無理だと思うのも事実。今はまだきっと、沙奈子ちゃんに受け入れてもらえない。その時期が来るまでは、何とか私の方で頑張らなくちゃ。
本来、人間ほどは手間のかからない筈のドールでさえそんな風に思うくらいだから、私には子供を生んで育てる能力なんてないと思ってた。私みたいのが子供を生んだりしたら、きっとその子を不幸にしてしまう。それに加えて男性嫌いだったから、私は一生、結婚なんてしないと思ってた。
玲那もそうなのかと思ってたけど、山下さんと出逢ったことで彼女は変わったと思う。毎日、社員食堂で彼と楽しそうに話す(と言うか実際には一方的に話し掛けてるだけだけど)彼女を見ると、お似合いのカップルなんじゃないかって思うの。
明るくはきはきしてる彼女と、落ち着いて彼女を受け止めてくれる彼と。
この頃はまだ、私はそんな風に思ってたのだった。
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