絵里奈の独白

京衛武百十

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玲那

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玲那れいなは会社でも、いつも暗い顔をして可愛げのない目つきで他人を見てた。だから当然、他の社員からは敬遠され、特に女性社員からは疎まれて、

『なに、あの子。なんであんなのが採用されたの?』

とか、

『コネでしょきっと。それか人事の誰かの愛人とかじゃないの?』

とか、

『あれが愛人?。どんな趣味よ!。ありえね~!』

とか、彼女に対する陰口で盛り上がってた。しかも、彼女を叩くことで仲間意識を作って馴れ合ってるのが見え見えだった。

さらには、面倒な仕事、嫌な仕事は彼女に押し付ければいいという空気がいつしか出来上がって、彼女は一人、いつも忙しそうにしてた。

彼女の方も、愛想は悪いのに頼まれた仕事は別に嫌そうな顔をするでもなく不平や不満を漏らすでもなく淡々とこなしてた。

だけど私はそういうのが嫌で、「私も手伝うよ」と彼女に声を掛けて一緒に仕事をこなした。

そんな私のことも他の女性社員達は『なにあれ?。カッコつけ?』『感じ悪い』と陰口を叩いてたけど、私はそういうのには慣れてたからそんなに気にならなかった。

こんな感じで何ヶ月か過ぎた頃、

「あの…、ありがとう……」

って、玲那が私に話しかけてくれた。それまではホントに仕事のことでしか口をきこうとしなかったのに。

「ううん!、だって私達の仕事だもの。当然だよ!」

私はそれが嬉しくてテンションがすごく上がってた。

それからしばらくして、私は彼女を誘ってショッピングに行くことにした。彼女は戸惑ってたけど、拒んだりはしなかった。そこで初めて、香保理かほりと玲那は出会うことになったんだ。

「あなたが玲那さん?。よろしく!」

香保理はいつもの感じで人懐っこい笑顔を玲那に向けた。

「よ…、よろしくお願いします……」

おどおどした様子で応えた玲那だったけど、でもすぐに二人は打ち解けた。私には予感があったんだ。この二人は仲良くなれるって。

具体的な根拠とかはなかったんだけどね。本当にただの直感。今から思うと、二人から同じ匂いを感じてたのかもしれない。同じ境遇を潜り抜けてきたっていう匂いなのかな。

事実、それはまさにその通りだった。私や香保理と親しくなった玲那は、自分がどういう目に遭ってきたのかを打ち明けてくれた。

彼女の話を聞いた時、私は涙が止まらなかった。玲那の過去は、私が感じてた以上の壮絶なものだった。

「そっか…、玲那も辛かったんだね……」

彼女の話を聞いた香保理も、涙と鼻水を溢れさせながらそう言ったのだった。

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