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あったかい
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お昼からも沙奈子ちゃんのペースは落ちなくて、結局、今日だけで三分の二ほどの宿題を終わらせてしまった。それをまた嫌々やってるんじゃないっていうのがすごい。
それから、三人で洗濯物のうち乾いてるものを取り込んで、私はワイシャツとかブラウスとかスラックスにアイロンをかけていった。それがまた<お母さん>って感じがして何だかくすぐったい。
洗濯物をが片付くと、スマホで、
「玲那、買い物行くけどどうする?」
って声を掛けた。するとまた壁の向こうから、
「行く~、ちょっと待って~!」
だって。スマホ要らないかなとは思いつつ、あんまりこっちから大声出すのも憚られて、たぶんこれからもスマホで呼ぶことになるだろうなとは思った。
バタバタと隣の部屋から出る気配がして、直後にうちのドアが開けられて、
「ただいま~」
と玲那が帰ってきた。
「おかえり」
三人でそれを出迎えて、それから改めて四人で買い物に出かける。
それが終わった帰り道、玲那が、達さんに
「やっぱり秋嶋さんたちって、いい人たちですよ。沙奈子ちゃんが一人で留守番してても大丈夫だったのは、秋嶋さんたちが守ってくれてたからっていうのもあるんじゃないかな」
とか話し掛けてるのが聞こえてきた。
玲那の言うことも一理あるのかもしれない。だけど、正直、私にはまだその人達のことを信頼はできないかな。玲那が言うから辛うじて『そうかもしれない』って思えるだけで。
ただ、玲那も、『秋嶋さん達のことを信じて!』と強硬に言ってくる訳じゃなかった。私達が信じ切れないことも分かってくれてるんだ。だから折り合いをつけようと間に入ってくれてるんだ。
そういう玲那だから信じられるんだよね。
アパートに帰ると、達さんが収納から石油ファンヒーターを出してきた。沙奈子ちゃんを一人にはしないということで、敢えて暖房器具としてそれを使うことに決めたそうだった。
これまではエアコンの暖房とコタツを併用してたんだけど、正直、型の古いこの部屋のエアコンではそろそろ厳しくなってきてたのも事実だった。
「ごめんだけど、沙奈子はファンヒーターには触らないでね。これは僕達がいる時だけ使っていいものだから」
「うん、分かった」
達さんが沙奈子ちゃんにそう念を押したのは、万が一の事故を心配したからだって分かる。決して沙奈子ちゃんのことを信じてない訳じゃない。でも、やっぱり思いがけないことってありえるから、責任を取れる大人がいる時にってことなんだろうな。
彼が近所のガソリンスタンドで灯油を買ってきて入れると、さっそく点けられた。
ボッという音と共に温風が噴き出すと、「わあ!」と沙奈子ちゃんが声を上げた。でもそのすぐ後に、
「くさ~い」
って鼻をつまむ。確かに、久しぶりに使うと灯油の臭いだけじゃなく中の埃が燃えるのか、焦げ臭いにおいもするもんね。
けれどそれもしばらくすると収まって、
「あったかい」
と、沙奈子ちゃんがほんのりと赤く染まった頬をして呟いたのだった。
それから、三人で洗濯物のうち乾いてるものを取り込んで、私はワイシャツとかブラウスとかスラックスにアイロンをかけていった。それがまた<お母さん>って感じがして何だかくすぐったい。
洗濯物をが片付くと、スマホで、
「玲那、買い物行くけどどうする?」
って声を掛けた。するとまた壁の向こうから、
「行く~、ちょっと待って~!」
だって。スマホ要らないかなとは思いつつ、あんまりこっちから大声出すのも憚られて、たぶんこれからもスマホで呼ぶことになるだろうなとは思った。
バタバタと隣の部屋から出る気配がして、直後にうちのドアが開けられて、
「ただいま~」
と玲那が帰ってきた。
「おかえり」
三人でそれを出迎えて、それから改めて四人で買い物に出かける。
それが終わった帰り道、玲那が、達さんに
「やっぱり秋嶋さんたちって、いい人たちですよ。沙奈子ちゃんが一人で留守番してても大丈夫だったのは、秋嶋さんたちが守ってくれてたからっていうのもあるんじゃないかな」
とか話し掛けてるのが聞こえてきた。
玲那の言うことも一理あるのかもしれない。だけど、正直、私にはまだその人達のことを信頼はできないかな。玲那が言うから辛うじて『そうかもしれない』って思えるだけで。
ただ、玲那も、『秋嶋さん達のことを信じて!』と強硬に言ってくる訳じゃなかった。私達が信じ切れないことも分かってくれてるんだ。だから折り合いをつけようと間に入ってくれてるんだ。
そういう玲那だから信じられるんだよね。
アパートに帰ると、達さんが収納から石油ファンヒーターを出してきた。沙奈子ちゃんを一人にはしないということで、敢えて暖房器具としてそれを使うことに決めたそうだった。
これまではエアコンの暖房とコタツを併用してたんだけど、正直、型の古いこの部屋のエアコンではそろそろ厳しくなってきてたのも事実だった。
「ごめんだけど、沙奈子はファンヒーターには触らないでね。これは僕達がいる時だけ使っていいものだから」
「うん、分かった」
達さんが沙奈子ちゃんにそう念を押したのは、万が一の事故を心配したからだって分かる。決して沙奈子ちゃんのことを信じてない訳じゃない。でも、やっぱり思いがけないことってありえるから、責任を取れる大人がいる時にってことなんだろうな。
彼が近所のガソリンスタンドで灯油を買ってきて入れると、さっそく点けられた。
ボッという音と共に温風が噴き出すと、「わあ!」と沙奈子ちゃんが声を上げた。でもそのすぐ後に、
「くさ~い」
って鼻をつまむ。確かに、久しぶりに使うと灯油の臭いだけじゃなく中の埃が燃えるのか、焦げ臭いにおいもするもんね。
けれどそれもしばらくすると収まって、
「あったかい」
と、沙奈子ちゃんがほんのりと赤く染まった頬をして呟いたのだった。
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