246 / 255
二人のおかげで
しおりを挟む
沙奈子ちゃんが宿題をどんどん進めてる時、玲那が急に声を上げた。
「あ、秋嶋さんたちと集まるんだった。ごめん、ちょっと行ってくる」
と言って、パッと部屋を出て行って、
「おはようございま~す」
って挨拶しながら隣の部屋に入っていく気配がしてきた。
私は達さんと顔を見合わせてちょっと苦笑いになって、沙奈子ちゃんはそんな私達を何とも言えない顔で見てた。たぶん彼女の方が玲那のその行動を受け入れてたのかもしれない。
最終的にいつもより少し長く時間を掛けて、冬休みの宿題の三分の一ほどを終わらせてしまった。この調子だと、週が明けての月曜日にはもう、冬休みの宿題は全部終わってるってことにもなるかもね。
それから沙奈子ちゃんと二人で昼食の用意を始めようとした時、彼女の左腕の傷痕が見えてしまって、ぐっと込み上げるものがあって涙が溢れそうになってしまった。
『沙奈子ちゃん…、そんな傷痕のことなんて気にしない人はいるからね。そういう人を見付ければいいからね』
なんてことを思ってると、隣の部屋から、どっと笑い声が聞こえてきた。一人とか二人とかのじゃない。五~六人くらいはいそうだった。アパートの住人全員が集まってるんだろうなって分かった。玲那の笑い声も交じってる。
楽しそうなのはいいんだけど、何してるんだろうね。
今日の昼食は親子丼。用意が殆ど終わったところでスマホで玲那に電話する。
「あ、玲那?。お昼できたよ」
すると壁越しに、
「は~い、今行く~!」
って、電話が要らないくらいにはっきり聞こえた。
「ただいま~」と帰ってきた玲那は、よほど楽しかったのかすごく上機嫌な感じだった。
「いや~、充実した時間だったあ。まさかここまでアニメの趣味が合う人がこんなに近くにいるなんて思わなかったな~」
そうなんだ。それは良かったね。しかも、
「あ、お昼からも行くからよろしくね。買い物行くんだったらまた声かけて。一緒に行くから」
だって。
私はまた、達さんと顔を合わせて苦笑いになってしまう。だけど、玲那が楽しそうにしてるのは素直に良かったと思える。それも、男の人相手になんて……。
もちろん今までだってそういう機会はあったと思う。男性だって玲那とアニメ趣味が合うだけならきっとたくさんいた。でも、男性を怖がる玲那にはそれができなかったんだ。
昼食が終わると、言ってた通り、すぐまた隣の部屋に行ってしまった。
私達は沙奈子ちゃんが宿題をする様子を二人で見守る。その間にも、微かに隣から話し声や笑い声が聞こえてくる。
「おねえちゃん笑ってるね」
不意に沙奈子ちゃんがそう言いながら達さんと私を交互に見た。嬉しそうな顔だった。沙奈子ちゃんはしっかりと、玲那が楽しそうにしてることを受け入れてくれてるんだ。
「そうだね」
達さんが穏やかな表情でそう言うのを見て、また涙がこみ上げてしまう。この二人に出逢えて本当に良かった。二人のおかげで玲那が救われたんだと実感できたのだった。
「あ、秋嶋さんたちと集まるんだった。ごめん、ちょっと行ってくる」
と言って、パッと部屋を出て行って、
「おはようございま~す」
って挨拶しながら隣の部屋に入っていく気配がしてきた。
私は達さんと顔を見合わせてちょっと苦笑いになって、沙奈子ちゃんはそんな私達を何とも言えない顔で見てた。たぶん彼女の方が玲那のその行動を受け入れてたのかもしれない。
最終的にいつもより少し長く時間を掛けて、冬休みの宿題の三分の一ほどを終わらせてしまった。この調子だと、週が明けての月曜日にはもう、冬休みの宿題は全部終わってるってことにもなるかもね。
それから沙奈子ちゃんと二人で昼食の用意を始めようとした時、彼女の左腕の傷痕が見えてしまって、ぐっと込み上げるものがあって涙が溢れそうになってしまった。
『沙奈子ちゃん…、そんな傷痕のことなんて気にしない人はいるからね。そういう人を見付ければいいからね』
なんてことを思ってると、隣の部屋から、どっと笑い声が聞こえてきた。一人とか二人とかのじゃない。五~六人くらいはいそうだった。アパートの住人全員が集まってるんだろうなって分かった。玲那の笑い声も交じってる。
楽しそうなのはいいんだけど、何してるんだろうね。
今日の昼食は親子丼。用意が殆ど終わったところでスマホで玲那に電話する。
「あ、玲那?。お昼できたよ」
すると壁越しに、
「は~い、今行く~!」
って、電話が要らないくらいにはっきり聞こえた。
「ただいま~」と帰ってきた玲那は、よほど楽しかったのかすごく上機嫌な感じだった。
「いや~、充実した時間だったあ。まさかここまでアニメの趣味が合う人がこんなに近くにいるなんて思わなかったな~」
そうなんだ。それは良かったね。しかも、
「あ、お昼からも行くからよろしくね。買い物行くんだったらまた声かけて。一緒に行くから」
だって。
私はまた、達さんと顔を合わせて苦笑いになってしまう。だけど、玲那が楽しそうにしてるのは素直に良かったと思える。それも、男の人相手になんて……。
もちろん今までだってそういう機会はあったと思う。男性だって玲那とアニメ趣味が合うだけならきっとたくさんいた。でも、男性を怖がる玲那にはそれができなかったんだ。
昼食が終わると、言ってた通り、すぐまた隣の部屋に行ってしまった。
私達は沙奈子ちゃんが宿題をする様子を二人で見守る。その間にも、微かに隣から話し声や笑い声が聞こえてくる。
「おねえちゃん笑ってるね」
不意に沙奈子ちゃんがそう言いながら達さんと私を交互に見た。嬉しそうな顔だった。沙奈子ちゃんはしっかりと、玲那が楽しそうにしてることを受け入れてくれてるんだ。
「そうだね」
達さんが穏やかな表情でそう言うのを見て、また涙がこみ上げてしまう。この二人に出逢えて本当に良かった。二人のおかげで玲那が救われたんだと実感できたのだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる