絵里奈の独白

京衛武百十

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グッジョブです

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今日は水曜日だから、玲那がアパートの方に帰ることになる。

「沙奈子ちゃんのことは、任せてよ」

そう言う玲那に、私も、

「お願い。明日には私も帰るから」

と、会社の正門前で言葉を交わして別れた。

三代目黒龍号にまたがって、まずは兵長を迎えにマンションの方へと走っていく玲那の姿を見送る。彼女もすっかり落ち着いてくれた。

実は、来支間きしまって人の件で玲那がどうしてあんな風になったのか、昨日、私のマンションに泊まっていった彼女が教えてくれた。

「あの来支間って人……、私の<お客>の一人だった人の息子とかかもしれない……。めちゃめちゃそっくりだったんだ。最初見た時は本人かと思って、心臓が止まりそうな気がしたよ。でもさすがに十七年も前の話だし、あんなに若い筈ないから、たぶん、あの人のお父さんとかだったんだろうな……」

それは、玲那が十歳頃の話……。詳しい内容に触れるのはやっぱり憚られるけど、彼女にとっては地獄のような記憶。そんなものを思い起こされたら、そりゃああなっても無理ないよね。

『どうして今頃そんなの……』

どうせ今からじゃ罪に問うこともできない。玲那自身、思い出したくもない、触れたくもない過去。罪に問えないのなら、せめてそっとしておいてくれればいいのに……。

香保理かほりも、玲那も、沙奈子ちゃんも、どうしてこんなに苦しまなきゃいけないんだろう。彼女達が一体、何をしたっていうの?。ただ普通に生まれてきて、普通に生きようとしてただけじゃないの?。

神様とかっていうのがいるのなら、どうしてそんな酷いことをするの?。

分からない。分からないよ、私には……!。

でも、だからこそ、私は自分にできることをするんだ。玲那を守る為に、沙奈子ちゃんを守る為に、いたるさんと力を合わせて。



夜、彼から電話があった。

「明日からさっそく、沙奈子は山仁やまひとさんのところで待っててもらうことにしたから、仕事が終わったら迎えに行ってあげて欲しい」

そう言った彼に向かって、

いたるさん、グッジョブです!」

って思わず声に出ちゃった。言ってから自分の顔が熱くなるのを感じたけど、でもいい。正直な気持ちだから。

いたるさん、私も頑張ります。あなたと一緒に頑張ります。私はもう、あなたの<妻>です。山下絵里奈です。

私達の家庭を守りましょう。家族を守りましょう。あなたと一緒なら、私、頑張れる気がするんです。

好きです。愛してます。いたるさん……。

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