絵里奈の独白

京衛武百十

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養子縁組

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沙奈子ちゃんがまたおねしょをするようになったことで、私達はすごくホッとしてた。

おねしょをするようになってホッとするとかおかしいと思うかもしれないけど、彼女の場合は、安心して幸せを感じるからこそおねしょをしてしまうっていうのがあるらしいから。ある意味では、おねしょできるくらいリラックスできてるっていうことかもしれない。

だから私と玲那は、月曜日からまた、向こうの部屋に戻ることになった。さすがにずっと部屋を空けておく訳にはいかないし。当面、以前と同じに週末帰ってくることになる。

私は仕事が終わってから志緒里しおりを迎えに来るけど、玲那は兵長にはキャリングケースに入ってもらって一緒に出勤して、会社のロッカーで待っててもらうことにしたって。

私にはできないことだけど、これは人それぞれ考え方感じ方があることだから口出しはしないでおこうと思う。

あと、明日火曜日、沙奈子ちゃんの学校で個人懇談があるっていうことで、いたるさんが有給を取ってる。せっかく結婚したんだから私が<沙奈子ちゃんのお母さん>として行きたかったんだけど、年末に向けて忙しくなる上に、夏以前にいろいろまとめて有給を取ってたから、さすがにしばらく取れる雰囲気じゃなかった。

だけど、今週は金曜日が祝日だから木曜日に帰ってこられるのがありがたいな。



水曜日。昼休憩に社員食堂でいたるさんが言ってきた。

「昨日、区役所で養子縁組ついて訊いてきたんだ」

その言葉に、私も玲那もハッとなる。でもすぐに玲那の頬が緩んで蕩けるみたいな顔になった。

「そっか~、いよいよか~♡」

その嬉しそうな顔に、私も自分の顔が緩むのが分かった。

「いよいよだね」

訊けば、養子縁組っていうのも形式的には婚姻と殆ど同じようなものなんだって。言われてみればと納得した。だってどちらも、他人同士が家族になる為の手続きだし。

ただ、未成年との養子縁組の場合は、家庭裁判所の審査が必要って話だった。だから今回は敢えて沙奈子ちゃんとの養子縁組については見送ることになった。何より、私達と書類の上でも親子になるかというのは、最終的には沙奈子ちゃん自身の判断に任せたいって彼は思ってるらしい。沙奈子ちゃん自身がそれを判断できるまでは待つって。

私も、彼の考えを尊重したい。

ただ、それはいいけど、その後で彼が言ったことに、私達は凍り付いてた。

「実は、昨日、役所で養子縁組の書類を貰って帰ってきてから、<事件>があってね」

「<事件>って……?」

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