絵里奈の独白

京衛武百十

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再びの

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この一週間、沙奈子ちゃんの様子に大きな変化はなかった。それは決して悪い意味じゃなく、『悪化するような様子もない』っていう意味ではいいことでもあると思う。私達はとにかく時間を掛けて彼女に接していくことにしてたから。

私は、<主婦>よろしく洗濯物をといれたあとでアイロンを掛けたりして、そして玲那はまるで自分の部屋みたいにポータブルTVにヘッドホンを繋いでアニメを楽しんでた。これも、穏やかに毎日を過ごすためにしてること。

そして、沙奈子ちゃんはその間、<おねしょ>もしなかった。これについては、必ずしも喜ばしいことじゃない気もする。

と思ったら、土曜日の朝、彼女が、

「ごめんなさい…」

って彼に謝りながら、穿いてたおむつを手に、朝食の用意をしてた私といたるさんの前に立った。

申し訳なさそうに上目遣いで私達を見る沙奈子ちゃんに、でも私も彼も、むしろ安堵してたと思う。だって、『おねしょしてくれた』んだもん。

「いいよいいよ、気にしないで。沙奈子が元気でいられたらそれだけでいいから…」

彼がそう言いながら、彼女を抱き締める。おねしょね濡れたおむつも気にせずに。ううん、沙奈子ちゃんのなら、私も別に気にならない。だから彼と沙奈子ちゃんの二人を私も抱き締める。抱き締めながら、また、泣いちゃってた。

しかも、気配を察したのか玲那まで起きてきて、さらに私と彼と沙奈子ちゃんを抱き締めてくれた。それがまた嬉しくて……。



そうだ、私達の暮らしは、始まったばかりだ。これからもきっと辛いこととかあると思う。だけどそんなのは生きていれば当たり前にあることのはずだから、みんなで一緒に乗り越えていけばいい。

そしてその日を境に、沙奈子ちゃんの表情はみるみる戻っていった。

ぽつりぽつりと言う感じだけど自分から喋るようにもなっていってくれて、次の金曜日には包帯も取れた。ガーゼはまだ当ててるけど、傷はもう完全に塞がってて、殆ど痛みもないって。

もちろんまだ何度か診察は受けなきゃいけないし、さすがに少し細くなっちゃってた感じだし、やっぱり傷痕は残りそうだと改めて言われたけど、それも時間が経てばかなり目立たな唸る筈とは言われた。よかった。もし気になるなら、コンシーラーとかで消すっていう方法もあるよね。

来週の土曜日はクリスマスイブ。実は大希ひろきくんのところでクリスマスパーティーをしないかってお誘いも受けたそうだけど、沙奈子ちゃんは「ごめんなさい」したってことだった。というのも、今回は、

「お父さんとお母さんとお姉ちゃんと一緒のパーティーがいい……」

って。

うん、わかった。今年は四人でゆっくりパーティーしよう、沙奈子ちゃん……!。

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