絵里奈の独白

京衛武百十

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なし崩し的に

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バス停を降りて会社に行くまでの間に、いたるさんが学校に電話してた。

教頭先生が出て、塚崎つかざきさんが朝一番に学校に来て沙奈子ちゃんの怪我のこととかどうしてそうなったのかということを説明してくれたって話してたって。

塚崎さんはそういう人なんだって。子供のことにとても真剣で、だからあの時にも必要な資料を見る為に児童相談所を訪れて、おかげで沙奈子ちゃんはまだあの程度で済んだんだ。

そうやって事情が学校側にも伝わったおかげで、沙奈子ちゃんの様子が少しでもおかしいとなったらすぐに連絡が来ることになった。

自転車通勤のおかげで私と彼より先に会社に着いてた玲那にも事情を話すと、ホッとした表情をしてくれた。

でも、まだ私も玲那も不安だった。だから。

「しばらく、沙奈子ちゃんのところから通うようにします。とりあえず、今週いっぱいは様子を見たいですから。それに、沙奈子ちゃんを病院に連れて行かないといけないですから」

そう、包帯を変えたり傷の経過を見る為に、週に二回、火曜日と金曜日に診察を受けるように病院からは言われてた。だけどいたるさんがいる設計部は残業することが前提でスケジュールを組まれてるような部署だった。週に二回も残業を断れば、上司からの嫌味とかの圧力は相当なものになると思う。

でも私と玲那のいる総務部は、年度末とかの繁忙期でもないかぎりは滅多に残業もない。あったとしても私と玲那が交代で残業を引き受ければたぶん問題ない。

そういう訳で、なんかなし崩し的に四人での生活が始まることになった。

昼休み。いつものように社員食堂で集まった時、玲那が改めて言った。

「私もうちから通いたいし、兵長連れてきていい?」

私の志緒里しおりいたるさんの部屋にいるから問題ないけど、玲那の兵長は彼女の部屋で留守番だったからね。それがしばらく帰れないとなると、さすがにそのままにはできないもんね。

「いいよ」

彼も二つ返事でOKしてくれる。

すると玲那は早速、仕事が終わると同時に兵長を迎えに自分の部屋に行った。

「じゃあ、先に帰るね」

三代目黒龍号にまたがった玲那にそう言って手を振って、私は彼のアパートへ向かうバスに乗るバス停へと向かった。

「ただいま」

沙奈子ちゃんが待つ部屋のドアを開けると、彼女が私の方を見てくれた。

『ああ、無事だった。良かった……』

しみじみそんな風に思ってしまう。表情は相変わらず硬いけど、私のことはちゃんと受け入れてくれてるのが不思議と分かったのだった。


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