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心配してくれてありがとう
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この来支間って人の口ぶりに爆発寸前だった私の耳に、すごく落ち着いた、静かで淡々とした言葉が届いてきた。
「分かりました。それでは僕が行きます」
達さんだった。彼が私をなだめるかのように真っ直ぐに見詰めてきてくれた。それを見た瞬間、私の中の熱や圧力がスーッと収まっていく。しかも、
「心配してくれてありがとう、大丈夫。ちゃんと説明したら分かってもらえると思うから。それより玲那のことを頼む」
その彼の言葉が、私に気付かせてくれた。ハッとなって振り返ると、玲那がまるで石膏像のように血の気の引いた顔で固まってるのが見えた。
『あ…!、ごめん、ごめん玲那……!』
私は、自分の感情にばかり囚われて彼女のことが頭からすっ飛んでた。そんな自分が情けなくて、怒りがどこかへ消えていくのも感じた。
「大丈夫、大丈夫だよ…」
玲那の体を抱き締めて、背中をさする。
私がそうしている間にも、彼は来支間って人と一緒に部屋を出て行ってしまったのだった。
……
…それから、児童相談所の中であったことを詳しく説明する気力は、私にはなかった。この時、玲那がどうしてあんなに固まってしまってたのかその理由を彼女から聞かされて、それでも打ちのめされてしまってたから……。
だけどしばらくして気を取り直して、
「沙奈子ちゃんを迎えに行かなきゃ……!」
って玲那が口にしたから、私も「そうね…!」と、力が入らない自分の体に鞭打って、強い雨の中を玲那と二人で児童相談所に向かって歩いた。場所自体は、スマホで調べたらすぐに分かったから。
なのに……。
それなのに、児童相談所ではやっぱり、
「関係者以外は面会できません」
って受付で言われて、中に入ることもできなかった。
だからせめて沙奈子ちゃんと彼が出てくるまで待とうと思ってた私と玲那の耳に、救急車のサイレンが届いてきた。
それがどんどんこちらに近付いてくる。
「…え?、まさか……?」
と思ったらそのまさかだった。
救急車が児童相談所の敷地内に入ってきて、ストレッチャーが下ろされた。それを押して救急隊員が建物の中に入っていく。
『なに…?、なにがあったの……?』
私は不安で胸が潰れそうになるのを感じてた。
玲那に支えてもらわないと立っていられないくらいに膝に力が入らない。
そして……、
そして再び救急隊員の姿が見えた時、ストレッチャーには小さな人影が見えた。しかも、救急隊員の後に続いて出てきたのは……。
「達……さん……?」
「分かりました。それでは僕が行きます」
達さんだった。彼が私をなだめるかのように真っ直ぐに見詰めてきてくれた。それを見た瞬間、私の中の熱や圧力がスーッと収まっていく。しかも、
「心配してくれてありがとう、大丈夫。ちゃんと説明したら分かってもらえると思うから。それより玲那のことを頼む」
その彼の言葉が、私に気付かせてくれた。ハッとなって振り返ると、玲那がまるで石膏像のように血の気の引いた顔で固まってるのが見えた。
『あ…!、ごめん、ごめん玲那……!』
私は、自分の感情にばかり囚われて彼女のことが頭からすっ飛んでた。そんな自分が情けなくて、怒りがどこかへ消えていくのも感じた。
「大丈夫、大丈夫だよ…」
玲那の体を抱き締めて、背中をさする。
私がそうしている間にも、彼は来支間って人と一緒に部屋を出て行ってしまったのだった。
……
…それから、児童相談所の中であったことを詳しく説明する気力は、私にはなかった。この時、玲那がどうしてあんなに固まってしまってたのかその理由を彼女から聞かされて、それでも打ちのめされてしまってたから……。
だけどしばらくして気を取り直して、
「沙奈子ちゃんを迎えに行かなきゃ……!」
って玲那が口にしたから、私も「そうね…!」と、力が入らない自分の体に鞭打って、強い雨の中を玲那と二人で児童相談所に向かって歩いた。場所自体は、スマホで調べたらすぐに分かったから。
なのに……。
それなのに、児童相談所ではやっぱり、
「関係者以外は面会できません」
って受付で言われて、中に入ることもできなかった。
だからせめて沙奈子ちゃんと彼が出てくるまで待とうと思ってた私と玲那の耳に、救急車のサイレンが届いてきた。
それがどんどんこちらに近付いてくる。
「…え?、まさか……?」
と思ったらそのまさかだった。
救急車が児童相談所の敷地内に入ってきて、ストレッチャーが下ろされた。それを押して救急隊員が建物の中に入っていく。
『なに…?、なにがあったの……?』
私は不安で胸が潰れそうになるのを感じてた。
玲那に支えてもらわないと立っていられないくらいに膝に力が入らない。
そして……、
そして再び救急隊員の姿が見えた時、ストレッチャーには小さな人影が見えた。しかも、救急隊員の後に続いて出てきたのは……。
「達……さん……?」
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