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ウルイは悔しくないの!?
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「やっぱり私は、その人間の王子のことが許せない……!」
家に帰って腰を落ち着けた途端、イティラがそう口を開いた。
「……」
ウルイは、そんな彼女にすぐには応えられなかった。するとイティラは、
「ウルイは悔しくないの!? 私はキトゥハとはそんなに顔も合したことないけど、彼がウルイを育ててくれたのは分かってるし、私にとっても恩人だと思ってる。そんな彼があんな目に遭わされたんだよ!?」
キトゥハの娘であるメィニアや孫であるリトゥアの憤りに共感してしまったのだろう。強い調子でウルイに迫った。
いつもは怒ったような態度は見せても、それは半分、彼に甘えてるがゆえの<ポーズ>の一面があったものの、今回は事情が違う。自分やウルイの恩人が人間の理不尽な仕打ちに命まで縮められたとあっては、引き下がれなかった。
「ウルイ……っ!」
視線を逸らし、黙々と食事の用意のために火を熾そうとしている彼に、イティラの口調はさらに強くなってしまう。
ウルイも、彼女がキトゥハや彼の娘や孫のことを思えばこそ気持ちがおさまらないのは分かっていた。分かっていたからこそ、軽々に言い返せなかったのだ。
しかし、キトゥハが人間への報復を望んでいないこともよく分かる。彼がそういう者だったからこそ、ウルイも自身の親や周囲の大人達への恨みを肥大化させることをせずに済んだ。あの者達をいくら責めても反省などしないだろうし、それどころか、何故自分が責められなければいけないのかその理由さえ理解しようとしないだろう。
そんな者達への憎しみで時間を費やすのはあまりにも無駄に過ぎるとキトゥハは教えてくれた。
そしてイティラも、自身の親や兄姉に対する恨みは昇華することができているのはウルイにも分かっていた。だから安心していたし、嬉しくもあった。
それでも、ようやくウルイの半分くらいの時間を生きてきただけのイティラは、まだ未熟でもあった。
キトゥハ自身の<願い>よりも、メィニアやリトゥアの憤りに感化された自分の感情を優先してしまう程度には。
キトゥハは<大人>だと認めてくれたものの、やはり決定的に人生経験が不足していることもまた事実。
「ウルイ……っ!」
何も言おうとしないウルイに、イティラの感情はやり場を失って、勝手に燃え盛ってしまっていた。
道理よりも自分の気持ちだけが昂ってしまっている者の姿がそこにあった。
だからウルイも、他にどうしていいのか分からなくて……
「―――――!?」
彼女を抱き締めてしまっていたのだった。
家に帰って腰を落ち着けた途端、イティラがそう口を開いた。
「……」
ウルイは、そんな彼女にすぐには応えられなかった。するとイティラは、
「ウルイは悔しくないの!? 私はキトゥハとはそんなに顔も合したことないけど、彼がウルイを育ててくれたのは分かってるし、私にとっても恩人だと思ってる。そんな彼があんな目に遭わされたんだよ!?」
キトゥハの娘であるメィニアや孫であるリトゥアの憤りに共感してしまったのだろう。強い調子でウルイに迫った。
いつもは怒ったような態度は見せても、それは半分、彼に甘えてるがゆえの<ポーズ>の一面があったものの、今回は事情が違う。自分やウルイの恩人が人間の理不尽な仕打ちに命まで縮められたとあっては、引き下がれなかった。
「ウルイ……っ!」
視線を逸らし、黙々と食事の用意のために火を熾そうとしている彼に、イティラの口調はさらに強くなってしまう。
ウルイも、彼女がキトゥハや彼の娘や孫のことを思えばこそ気持ちがおさまらないのは分かっていた。分かっていたからこそ、軽々に言い返せなかったのだ。
しかし、キトゥハが人間への報復を望んでいないこともよく分かる。彼がそういう者だったからこそ、ウルイも自身の親や周囲の大人達への恨みを肥大化させることをせずに済んだ。あの者達をいくら責めても反省などしないだろうし、それどころか、何故自分が責められなければいけないのかその理由さえ理解しようとしないだろう。
そんな者達への憎しみで時間を費やすのはあまりにも無駄に過ぎるとキトゥハは教えてくれた。
そしてイティラも、自身の親や兄姉に対する恨みは昇華することができているのはウルイにも分かっていた。だから安心していたし、嬉しくもあった。
それでも、ようやくウルイの半分くらいの時間を生きてきただけのイティラは、まだ未熟でもあった。
キトゥハ自身の<願い>よりも、メィニアやリトゥアの憤りに感化された自分の感情を優先してしまう程度には。
キトゥハは<大人>だと認めてくれたものの、やはり決定的に人生経験が不足していることもまた事実。
「ウルイ……っ!」
何も言おうとしないウルイに、イティラの感情はやり場を失って、勝手に燃え盛ってしまっていた。
道理よりも自分の気持ちだけが昂ってしまっている者の姿がそこにあった。
だからウルイも、他にどうしていいのか分からなくて……
「―――――!?」
彼女を抱き締めてしまっていたのだった。
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