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一抹の寂しさ

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<リトゥア>と名乗った少年に連れられて訪れたそれは、キトゥハが以前住んでいた家とほとんど変わらない造りだった。単に新しくなっているだけだ。

ウルイには何となくその理由が分かる気がした。自分もあの廃屋同然の家にずっと住み続けているくらいだから、あまり大きく変わって欲しくはないのだ。

それに慣れてしまっているから。

加えて、キトゥハの娘にとっても、自分が生まれ育った家ということで馴染みもあるだろう。

贅沢をするよりも落ち着きや寛げることを優先するキトゥハらしい家だと思った。

だが、ここまで彼が姿を見せなかったことが気になった。しかも、こんな幼い子供を一人で迎えにやるとか、キトゥハらしくない気がする。

とは言え、あまり何度もキトゥハと顔を合わせたわけでもないイティラは特に気にしてるようでもなかったが。

その辺りはやはり付き合いの長さの差だろうから、ウルイは何も言わなかった。

もっとも、イティラはイティラで、

『どうして顔を見せないんだろ……』

とは感じていた。彼女も、キトゥハはちょっと子供っぽいところもある、少し悪戯好きな人物だと思っていたからだ。

そして二人は、すぐにその理由を知ることとなった。

「すまんな……こんなナリで」

あの穏やかな笑みを浮かべてはいるもののその声には以前のような張りはなく、その顔にもかつての覇気はまるでない、床に臥せったまま体を起こすこともままならない<寝たきり老人>そのものとなったキトゥハが出迎えたのだ。

その彼の脇には、素朴な顔立ちながらやはりキトゥハの娘であることをすぐに窺わせる美麗さも秘めた大人の女性が寄り添っていた。

「キトゥハ……老いたな……」

臥せったままの彼のすぐ横に腰を下しながら、ウルイがしみじみと声を掛けた。キトゥハの年齢を考えればそれほど不思議でもない変化ではある。

ただ、やはり、飄々として、底が知れない独特の雰囲気を持っていた彼が見る影もないというのは、一抹の寂しさも感じさせられてしまった。

一方、イティラは、とても茶化していい雰囲気ではないと悟って、畏まっていた。

そんな彼女にも視線を向けたキトゥハが、

「いい女になったな……もう立派な大人だ……」

まるで二人が何のために来たのかを見透かしたかのように微笑みかける。

するとイティラが恥ずかしそうに身をよじる。毛皮の所為で分かりにくいが、きっと顔も真っ赤になっているだろう。

自分ではもう大人だと思いつつ、こうして改めて言われると、なんだかいたたまれない気分にもなる。自分がやたらと背伸びをして大人のフリをしようとしていたのを看破されてしまったかのような……

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