85 / 126
成人認定
しおりを挟む
孤狼との戦いからさらに一年。イティラはますます美しくしなやかに成長していた。確かに見た目には、鼠色の毛皮に虎縞模様と、人間の目にも獣人の目にも必ずしも『美しい』とは言い難かったかもしれないが、彼女がまとう気配と言うか空気感は、凛としていて、力強さと懐の深さを感じさせるものではあっただろう。
正確な年齢が分からないのでイティラ本人の様子からの判断になるにせよ、世間一般でならおそらく十分に<成人>として認められる可能性はあった。
そもそも、ここの人間社会において成人として認められる条件は、
<数えで十五歳となっていること>
<自分で自分の食い扶持を稼げること。あるいは家事全般がこなせること>
なので、実はもうすでに今のイティラなら成人として認められる可能性が十分にあるのだ。年齢については、本人の能力次第で一年程度なら前倒しが認められることさえある。
十八歳や二十歳という風に、年齢で一律に決めてしまうのではなく、あくまで本人の能力によって判断されるのがここの社会の慣習だった。
本人の能力で成人が認められる場合だと、できない者は何歳になっても成人として認められないこともあるという問題点もある一方、年齢で区切って一律で成人として扱う場合には、およそ<大人>とは言い難い未熟な者であっても成人として扱われてしまうという問題点もある。
そのどちらを良しとするかはその時点での社会の状況によるのだろうが、少なくともここでは、イティラは、
<大人の女性>
としての条件は満たしていると言ってもいいのだろう。
だから彼女としては、
「もういい加減、私を大人と認めて……!」
ウルイにそう言って食って掛かったりもした。
が、ウルイとしては、
『俺も覚えがあるが、そうやって『自分は大人だ!』と言い張ってるうちは、なあ……』
とも思ってしまうのも正直なところだった。
なので、
「……分かった。じゃあ、キトゥハにも今のイティラを見てもらおう。それで、キトゥハが『成人として認めてもいい』と判断してくれたら、俺もそれに従う」
妥協案としてそう口にした。
「分かった! 絶対だよ!?」
そんな風に言いながら前のめりになっている姿は、やはりまだあどけなさも感じさせる。ゆえに、自分自身が人間としては未熟であることを自覚しているウルイには、判断がつかなかったのだった。
が、
『俺みたいなのでもまあ<大人>なんだから、それを思えばイティラももう……』
そんな風に思ってしまうのも、偽らざるところだったりもする。
いずれにせよ、ここは、第三者として公平な意見を示してくれるであろうキトゥハに訊くのが一番だと思ったのだった。
正確な年齢が分からないのでイティラ本人の様子からの判断になるにせよ、世間一般でならおそらく十分に<成人>として認められる可能性はあった。
そもそも、ここの人間社会において成人として認められる条件は、
<数えで十五歳となっていること>
<自分で自分の食い扶持を稼げること。あるいは家事全般がこなせること>
なので、実はもうすでに今のイティラなら成人として認められる可能性が十分にあるのだ。年齢については、本人の能力次第で一年程度なら前倒しが認められることさえある。
十八歳や二十歳という風に、年齢で一律に決めてしまうのではなく、あくまで本人の能力によって判断されるのがここの社会の慣習だった。
本人の能力で成人が認められる場合だと、できない者は何歳になっても成人として認められないこともあるという問題点もある一方、年齢で区切って一律で成人として扱う場合には、およそ<大人>とは言い難い未熟な者であっても成人として扱われてしまうという問題点もある。
そのどちらを良しとするかはその時点での社会の状況によるのだろうが、少なくともここでは、イティラは、
<大人の女性>
としての条件は満たしていると言ってもいいのだろう。
だから彼女としては、
「もういい加減、私を大人と認めて……!」
ウルイにそう言って食って掛かったりもした。
が、ウルイとしては、
『俺も覚えがあるが、そうやって『自分は大人だ!』と言い張ってるうちは、なあ……』
とも思ってしまうのも正直なところだった。
なので、
「……分かった。じゃあ、キトゥハにも今のイティラを見てもらおう。それで、キトゥハが『成人として認めてもいい』と判断してくれたら、俺もそれに従う」
妥協案としてそう口にした。
「分かった! 絶対だよ!?」
そんな風に言いながら前のめりになっている姿は、やはりまだあどけなさも感じさせる。ゆえに、自分自身が人間としては未熟であることを自覚しているウルイには、判断がつかなかったのだった。
が、
『俺みたいなのでもまあ<大人>なんだから、それを思えばイティラももう……』
そんな風に思ってしまうのも、偽らざるところだったりもする。
いずれにせよ、ここは、第三者として公平な意見を示してくれるであろうキトゥハに訊くのが一番だと思ったのだった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

第十王子との人違い一夜により、へっぽこ近衛兵は十夜目で王妃になりました。
KUMANOMORI(くまのもり)
恋愛
軍司令官ライオネルとの婚約を強制された近衛兵のミリアは、片思い相手の兵長ヴィルヘルムに手紙を書き、望まぬ婚姻の前に純潔を捧げようと画策した。
しかし手紙はなぜか継承権第十位の王子、ウィリエールの元に届いていたようで――――
ミリアは王子と一夜を共にしてしまう!?
陰謀渦巻く王宮では、ウィリエールの兄であるベアラルの死を皮切りに、謎の不審死が続き、とうとうミリアにも危険が迫るが――――
あなたへの道
秋月真鳥
BL
人間よりも長い時を生きる妖精種の朱雀(すざく)は、山でひっそりと暮らしている。
両親を大黒熊に殺された赤ん坊、青慈(せいじ)を拾った日から、朱雀の生活は変わっていく。
育っていく青慈と、生活に加わる女性たち。
そこに赤ん坊の紫音(しおん)も加わった。
青慈は勇者、紫音は聖女と判明して、朱雀は魔王から二人を守るために努力する。
これは、小さな青慈が朱雀の心を掴むまでの、あなたへの道。
魔王は軽く倒しつつ……。
※一章で魔王は倒します。
※三章から恋愛パートです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる