あなたのことは一度だってお父さんだと思ったことなんてない

京衛武百十

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成人認定

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孤狼との戦いからさらに一年。イティラはますます美しくしなやかに成長していた。確かに見た目には、鼠色の毛皮に虎縞模様と、人間の目にも獣人の目にも必ずしも『美しい』とは言い難かったかもしれないが、彼女がまとう気配と言うか空気感は、凛としていて、力強さと懐の深さを感じさせるものではあっただろう。

正確な年齢が分からないのでイティラ本人の様子からの判断になるにせよ、世間一般でならおそらく十分に<成人>として認められる可能性はあった。

そもそも、ここの人間社会において成人として認められる条件は、

<数えで十五歳となっていること>

<自分で自分の食い扶持を稼げること。あるいは家事全般がこなせること>

なので、実はもうすでに今のイティラなら成人として認められる可能性が十分にあるのだ。年齢については、本人の能力次第で一年程度なら前倒しが認められることさえある。

十八歳や二十歳という風に、年齢で一律に決めてしまうのではなく、あくまで本人の能力によって判断されるのがここの社会の慣習だった。

本人の能力で成人が認められる場合だと、できない者は何歳になっても成人として認められないこともあるという問題点もある一方、年齢で区切って一律で成人として扱う場合には、およそ<大人>とは言い難い未熟な者であっても成人として扱われてしまうという問題点もある。

そのどちらを良しとするかはその時点での社会の状況によるのだろうが、少なくともここでは、イティラは、

<大人の女性>

としての条件は満たしていると言ってもいいのだろう。

だから彼女としては、

「もういい加減、私を大人と認めて……!」

ウルイにそう言って食って掛かったりもした。

が、ウルイとしては、

『俺も覚えがあるが、そうやって『自分は大人だ!』と言い張ってるうちは、なあ……』

とも思ってしまうのも正直なところだった。

なので、

「……分かった。じゃあ、キトゥハにも今のイティラを見てもらおう。それで、キトゥハが『成人として認めてもいい』と判断してくれたら、俺もそれに従う」

妥協案としてそう口にした。

「分かった! 絶対だよ!?」

そんな風に言いながら前のめりになっている姿は、やはりまだあどけなさも感じさせる。ゆえに、自分自身が人間としては未熟であることを自覚しているウルイには、判断がつかなかったのだった。

が、

『俺みたいなのでもまあ<大人>なんだから、それを思えばイティラももう……』

そんな風に思ってしまうのも、偽らざるところだったりもする。



いずれにせよ、ここは、第三者として公平な意見を示してくれるであろうキトゥハに訊くのが一番だと思ったのだった。

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