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お似合い

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イティラも年頃の女の子らしく、自分の<女らしさ>や<女としての魅力>がウルイを振り向かせるのに必要だと考えたりしてしまっていた。

けれど、女性に対して<幻想>を抱いていないウルイにはまったく見当違いのものでしかなかった。

元より、鼠色の毛皮に覆われた虎縞の<半端な獣人>という、同族の視点から見ればはっきり言って<醜い>彼女のことを見た目で選ぶ獣人はいないだろう。

あの<青年>でさえ、イティラのことは自分の子を産ませるための<道具>としか見ていなかった。恐らく、彼女を乱暴に組み伏せておざなりに精を放ち、とにかく孕ませようとするだけで、まともに彼女の姿を見ることもなかったに違いない。

それに対してウルイは、そんなイティラの見た目については何とも思っていないのだ。しかも、人間社会にいた頃には、目先の欲を満たすためにウルイとさほど歳も違わない<少年>でもたぶらかし『食って』しまうような淫猥な女も何人も見てきた。そういう女達の中には、見た目だけならなるほど相当なレベルの<美女>もいた。

けれどウルイはそういう、

『自身が女であることを、自らの欲求を満たすための都合の良い道具としか思っておらず、そのために<女>を磨こうとする』

ような女性に対しては強い嫌悪感すら抱いていた。だから、

<女の魅力>

に拘ろうという姿勢は、彼に対してはむしろ逆効果の可能性すらあったのだ。

そんなことをしなくても、ウルイは十分、イティラのことを認めていた。

ただ、彼女がまだ幼いから、『自分が守らなければ』という思いが先に立っていたのだろう。

ウルイ自身は、

『たまたま一緒に暮らしているだけだ』

とは言うものの、人間の心理というものは複雑なのだ。

時には本人でさえ自身の<気持ち>を正しく認識できない場合もあるほどに。

けれど、

『女性として魅力的である』

こと以上に、

『共に生きる上で信頼できる相手』

であることが、ウルイに対しては必要だったのである。

『女性として魅力的』であろうとして性的なアピールばかりを伸ばそうとしていては、結果として彼の不信感を煽るだけだったかもしれない。

だけどイティラは、

『ウルイを守れるような者になりたい!』

という方向に舵を切った。

今回の件は、皮肉なことに彼女にそれを強く意識させるきっかけとなったのだ。

まさしく、

『怪我の功名』

というやつだろうか。

そして、冷や汗で全身がびしょ濡れになったウルイもついでに水浴びすることになり、イティラも改めて彼と一緒に水浴びした。

男と女とで水浴びをしているというのに<色っぽい空気>になどまったくならなかったが、無駄のない引き締まった逞しい体を持つウルイと、猫科の獣のような何とも言えない色香と猛獣の力強さも併せ持つイティラは、十分に、

『お似合い』

に見えたのだった。

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