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第二幕

その人は『親のことは尊敬してます』『感謝してます』みたいに言ってたけど、本当に尊敬しているなら、感謝しているなら、自分がそれだけ苦しんでるこ

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出版社としては私がその人のことをコテンパンに論破することを期待してインタビューを企画したみたいだけど、私はただその人の話を聞いただけで終わらせた。

だって私はその人個人がどんな考えを持ってたところでそれ自体を否定するつもりはそもそもなかったんだしさ。

それにその人も、別に私を論破しようとは思ってなかったみたいだし。冷静で頭が良くて誠実な人なんだなって感じたよ。でも、だからこそ今のこの世界は生きづらかったんだろうなって感じた。

だけど、それだからこそ悲しいなと思うんだよ。こんな真面目な人がこれだけ思い悩んでるのに親はそれを受け止めてもくれなかったんだろうなって思うとさ。ううん、

<その人にとって、『この人達なら受け止めてくれる』と実感できるような親>

じゃなかったんだろうなって実感しちゃって。

その人は『親のことは尊敬してます』『感謝してます』みたいに言ってたけど、本当に尊敬しているなら、感謝しているなら、自分がそれだけ苦しんでることをどうして打ち明けてあげなかったの?って余計に思うんだよ。

当時はまだそこまではっきりとは思わなかったんだけど、今はそれこそはっきりと思うんだ、

『だからこそ許せない』

ってさ。自分の子供がそこまで思いつめてたのに気付かなかったとしたら、私はそんな自分が許せないよ。分かる? 親を頼ろうとしないのは、

『頼れない親だ』

と言ってるのと同じなんだ。ましてや子供に頼られたくないと思ってる親ってなんなの?としか思わない。

自分が勝手に子供をこの世に送り出しておいてその子供に『自分を頼るな』『親を頼るな』って、なんのつもり?

私は自分が死ぬまで子供達の親であることを放棄するつもりはないよ。私の力が必要なんだったら貸すし、助けてほしいと思ってるなら助けるよ。それで子供が自立できなかったとしても、『だからどうした?』としか思わない。

だって、そもそも自立できないような人間だったら私が突き放したらどうせ他の人に寄りかかってそっちを頼るだけでしょ? 他所様に迷惑掛けることになるじゃん。それじゃ意味ないじゃん。他所様にはなんの責任もないんだからさ。

それだけの覚悟も矜持も持ってる実感のない親だったから、そこまで思いつめてても相談もできなかったんだろうなとしか思えないんだっての。

親を尊敬してるなら、感謝してるなら、頼りなさいよ。苦しい胸の内を明かしなさいよ。他所様に迷惑を掛けるんじゃなくてさ。

口では尊敬してる感謝してるって言いながらそれができないなんて、親を愚弄してるっての。

すでに亡くなってるならどうしようもないだろうけど、インタビューしたその人の親はしっかりと存命だったんだよね。現役の企業人だって言うし。

まあその人の場合は、自分の考えを誰かに押し付けることはしてないからよかったんだけどさ。

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