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第二幕

人間の内心なんて、どれほど詳細に描写したって完璧に描写し切れるなんてことはないと思うよ? 作家ごときが完璧に表すことができるのなら、人間社

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人間の内心なんて、どれほど詳細に描写したって完璧に描写し切れるなんてことはないと思うよ?

作家ごときが完璧に表すことができるのなら、人間社会の問題なんてほとんど解決できてるでしょ。そうは思わない? ねえ?

なんかさ、従業員を自殺するまで追い詰めておいて、それがきっかけでその企業のとんでもない体質が明るみになっても、その<とんでもない体質>が間違いなんだってことを認めようとしないのが次々とニュースになったりしてるよね?

そこで<謝罪>とかが出てきても、果たして本気の謝罪なのか。

『取り敢えず謝罪コメントだけ出しておけばいいだろう』

的な考え方がものすごく透けて見えてくるんだけど、たとえそういう企業を運営してる人らの内心を詳細に描写したって、改まると思える? 反省とかすると思えるの? 私にはとてもそんな想像はできないなあ。

実際、深夜のワンオペについて批判されて『対処します』的なコメントを出した企業とかが実はまったくワンオペを解消してなかったってのもニュースになったりしてたじゃん。間違いを認める人は、そんなことを放置しないと思うんだけど?

いくら口先だけで謝罪してるふりをしてたって実際に改めてなけりゃそれは『間違いを認めた』ってことにはならないと思うけど?

そして作家がそういう心理を詳細に描写して、それが本当に正確なものだったら、具体的な改善方法だって考えだせるんじゃないの? なのに実際にはそうじゃないよね?

ということは、いくら詳細な心理描写に凝ってみたって人間の心理を完全には描写しきれてないってことだし、描写しきれてない部分については結局、読み手側が考えるしかないんじゃないの?

私は、自分の作品で登場人物の心理描写とか内面とかをしつこいくらいに描くけど、だからって人間関係を考える上で私の作品が<正解>ってわけじゃないんだ。そんなことは描いてる私自身が分かってる。

描いても描いても納得のいく描写にならないんだよ。

『描き切れてない』

って自分でも思っちゃうんだ。そうなるとやっぱり、私が描写しきれていないところについては読み手側に想像してもらうしかなくなるし、何より、私が描きたかった部分を読んだ人が理解してなかったりすると、自分の未熟さを痛感させられるんだよね。

そう考えるとさ、どんなに凝ってたり丁寧な心理描写を行ったところで読み手側が想像しなきゃいけない部分なんてなくならないってことだよね?

『丁寧すぎる描写は読者の想像力を育てない!』

みたいなのって、むしろ読者を侮ってると思うんだけどな。

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