私が異世界物を書く理由

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
601 / 1,186
第二幕

人間を<人間じゃない何か>だと言い張るのだって、それはれっきとした<嘘>でしょ? なのにその嘘を『事実だ!』とか重ねて言い張るのって、『嘘を

しおりを挟む
改めて言うけどさ、人間を<人間じゃない何か>だと言い張るのだって、それはれっきとした<嘘>でしょ? なのにその嘘を『事実だ!』とか重ねて言い張るのって、

『嘘を嘘と認識できてない』

ってことじゃん? だったら、そうやって『自分が口にした嘘を嘘と認識できない』人の周りには、似たような傾向を持つ人が集まるのも当然じゃないの?

私は自分を<立派な人間>だなんて言うつもりはないんだよね。これは謙遜なんかじゃなくて、

『私は立派な人間だ!』

って言ったらそれは確実に嘘になるから。客観的に見て私はどう解釈したって立派な人間なんかじゃないんだよ。

でもそれでいいんだ。『私は立派な人間だ!』なんて嘘を嘘と認識できなくなる方が嫌だしさ。そして立派な人間になんかなろうとも思わない。

だって、

<赤の他人から見た立派な人間>

なんて、

<それを見てる人にとっての都合のいい何か>

ってだけだしさ。私にとってどうでいい人から私の本質じゃないところを評価されたって居心地悪いだけだよ。私は、ダンナと子供達とさくらとさくらの子供達から信頼されてればそれでいい。

あと、ダンナの親戚ね。ダンナの親戚、すっごいいい人だしさ。確実に味方にしておいた方がいいタイプなんだよ。逆に敵に回すとものすごく怖いと思う。生物学者でしかも医師でもあって、とんでもなく博識で優秀な人だし、世界中に知り合いがいる人でさ。あの人を敵に回すなんて、考えただけで背筋が凍るよ。

本人はぜんぜん怖い感じの人じゃないんだけどね。ただしいろいろ危険な地域とかも飛び回ってたりするから、とにかくその手の危ないことにも慣れてて。

実は私の作品の登場人物のモデルにもなってる。てか、敵役としても出てきてもらったりしてる。あの人をイメージして悪役作ったらこれがもう強すぎて手に負えなくなっちゃってボツになった作品もある。さくらに、

「これ、主人公が主人公として成立してないじゃないですか」

と、容赦なく指摘されたんだ。そりゃそうだよね。ラスボスが強すぎて結局のところ決着をつけずに主人公が逃げて終わったんだから。

<エンターテイメント向けの商品>

としてはこれはないよね。商業ベースじゃないただの<作品>としてならそういうのもアリだとは思うけど、<商品>としてはね。そんな不完全燃焼な肩透かしは厳しいと私だって思う。

だけど私は好きだよ。そういうのもさ。

<作品>ってのは自由でいいんだよ。だってそれは<嘘>なんだから。最初から嘘を嘘として構築してるんだから、現実とは違って、嘘であることが大事だと思う。

問題なのはその嘘を嘘と認識できないことなんじゃないの?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

晴明さんちの不憫な大家

烏丸紫明@『晴明さんちの不憫な大家』発売
キャラ文芸
最愛の祖父を亡くした、主人公――吉祥(きちじょう)真備(まきび)。 天蓋孤独の身となってしまった彼は『一坪の土地』という奇妙な遺産を託される。 祖父の真意を知るため、『一坪の土地』がある岡山県へと足を運んだ彼を待っていた『モノ』とは。   神さま・あやかしたちと、不憫な青年が織りなす、心温まるあやかし譚――。    

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

後宮の才筆女官 

たちばな立花
キャラ文芸
後宮の女官である紅花(フォンファ)は、仕事の傍ら小説を書いている。 最近世間を賑わせている『帝子雲嵐伝』の作者だ。 それが皇帝と第六皇子雲嵐(うんらん)にバレてしまう。 執筆活動を許す代わりに命ぜられたのは、後宮妃に扮し第六皇子の手伝いをすることだった!! 第六皇子は後宮内の事件を調査しているところで――!?

処理中です...