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私が生んだのは、人間だよ。犬でも猫でもない。人間なんだ。その私が子供を人間として扱わなくてどうすんの?

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「私が生んだのは、人間だよ。犬でも猫でもない。人間なんだ。その私が子供を人間として扱わなくてどうすんの?」

こっちの世界の主人公の母親はそう言うんだよ。

当たり前じゃん。人間が人間以外の生き物を生むわけないんだから、子供が人間以外の生き物だって言うなら親もそうでなきゃおかしいじゃん。

『誰も<人間以外の生き物だなんて言ってない! 『動物と同じ』だと言ってるだけだ!』

って?

ああん? 他人様の子供を掴まえて『動物と同じ』とか、どんな<躾>受けてきたの? ええ? 

それで、

『子供は動物と同じだから躾けて人間にするんだ』

とか、どの口が言うの? 自分は親からまともに躾けられてないじゃん。

まともに躾けられてるのが、他人様の子供を<動物扱い>とかするわけないじゃん。

『人間だって動物だ!』

だって? おいおい、それじゃ子供もちゃんと人間なんだから人間扱いしなきゃおかしいじゃん。

『子供は動物と同じ』なんてのは、最初っから理屈として破綻してるっていい加減に認めようよ。現実を見ることのできない輩の戯言なんだってさ。

私も、昔はそんな風に思ってた時期もあったよ。でも、だからこそ、それが間違いだってつくづく実感したから認識を改めたんだ。

私が生んだのは<獣>じゃないよ。その事実は揺るがない。

だからこっちの世界の主人公の母親もそう思ってるだけ。

とは言え、何度も挫けそうになるけどさ。だけど、真面目なだけで仕事しか取り得のなさそうな父親とお互いに支え合うことで乗り切るんだよ。

そして主人公は十四歳になるんだけど、こっちの世界では十五歳から十六歳ぐらいで<大人>と認められるんだ。

そこを主人公は、さっさと大人になって好き勝手に生きたいと願って、<兵士>になることを願うんだよね。

実は主人公がいる国は、周囲を天然の要害に囲まれて難攻不落な上、戦略的な価値もないという、少々マイナスな理由で百年以上戦争が起こってなくて、軍隊も、訓練自体はそれなりに厳しいけど、まあ、

<家を継げない次男三男の収容所>

的な存在になっちゃってるという。

で、前世を合わせればもう三十年以上生きてる主人公もその辺はよく理解できてて、軍隊で自分を鍛えて、あわよくば世界に対して復讐しようと考えるんだよね。

だけど、両親はそんな主人公の狙いを察して、軍に入ることを猛反対する。

それに対して、主人公は、

「なんでだよ!? お前らにとっちゃ邪魔者の俺がいなくなった方が都合がいいだろうがよ!!」

と吠えるんだけど、母親は言うんだよ。<鬼の形相>で。

「あんたを勝手にこの世に送り出したのは、他の誰でもないこの私だ。文句があるなら私が聞いてやる。だが、あんたの憂さ晴らしのために他人を傷付けるのは、絶対に許さん!!」

ってさ。

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