私が異世界物を書く理由

京衛武百十

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それに向き合うことにしたんだ

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そうして具体的で現実的な対処法を模索しつつ、主人公は娘との関係を再構築していく。

ゆっくり話をして、娘がそれまで口にできなかった不平不満にも耳を傾けて。

「お父さんはね、本当はこの世界に存在しないはずの人間だったんだ。記憶もなくて、戸籍もなくて、いるはずのない人間だったんだよ。

それなのに、そんなお父さんをたくさんの人達が助けてくれた。お母さんとも出逢って、愛し合って、そして君が生まれたんだ。

本当はこの世界にいるはずのない僕が結婚して子供を作るなんて、普通なら許されることじゃなかったと思う。だけど僕はお母さんに君を生んでもらった。

これは、僕が勝手にやったことなんだ。本当に僕の勝手で君をこの世に送り出したんだ。それでも、君が僕のところに来てくれたのはたまらなく嬉しかった。

ただ、嬉しすぎて舞い上がってたんだな。君が喜んでくれてると思ってついついやりすぎてしまった。『嬉しかったんだから仕方ないだろ!』なんてもう言わない。僕が、お父さんが間違ってた。君が本当は嫌がってたことに気付かなかったのはお父さんの失敗だ。君が悪いんじゃない。

だから、今度のことも、結局はお父さんが招いたことだと思う。その償いをさせてほしいんだ」

夜。布団を並べて横になりながらそう語る父親(主人公)に、娘は、背中を向けて、

「いまさらそんなこと……そんなんで許してもらおうと思ってるとか、卑怯……」

不信感を隠さない。

でも主人公は、逆にホッとするんだよ。そうやって不満を口にしてくれるようになったことにさ。

それまでの娘は、本当に<いい子>だった。親に酷く反抗することもなくて真面目で。

だけどそれは、実際にはただの<演技>だった。<いい子のフリ>なだけだった。大人が怖くていい子のフリをしてただけなんだ。

それが不満を口にできるようになった。

これが大事なんだよ。

子供の<本音>と向き合えなくてなにが<親>だよ。『生んでやった』とか『育ててやった』とか言って子供に仮面を被らせてそれで立派な親のつもりとか、そんなんでよく<大人>のフリできるよね。

この世界の人間じゃない主人公が子供をつくろうなんて、本人の<勝手>以外のなんだって言うのさ。

そんな親の下に子供を来させようなんて、身勝手極まりない話じゃん。

その身勝手を貫くなら、それによって生じる<義務>にも目を背けちゃダメなんじゃないの?

自分の勝手で生み出した子供を幸せにするのは親の義務だってことにさ。

主人公は、それに向き合うことにしたんだ。

『自分の勝手でこの世に送り出してしまったこの子を幸せにできなくて、なにが<親>だよ』

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