私が異世界物を書く理由

京衛武百十

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命の形が変わったら

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異世界物に限らずフィクションの中で私が疑問に感じてるものがある。

フィクションでは、主人公を含む登場人物が全く別の存在に変わってしまっても元の意識とか感覚とか感情とか感性とか価値観とかがそのまま維持されてたりするんだけど、それって実際にはどうなのかな?って思っちゃうんだ。

だってそうでしょ?

人間の感情とか心とかって、きっと、その時点での自分の体が形作ってるものでもあると思うんだよ。

なにしろ、美容整形で綺麗になったら、内向的で後ろ向きだった人が自信満々の外向的で前向きな性格に変わっちゃったっていう話もあったりするじゃん。

これってもう完全に、自分の姿形が変わるだけで別人のように変わっちゃうことが現にあるってことでしょ?

美容整形とかを受ける人達が判を押したみたいに言う、

『自分に自信をつけたい』

ってのがそれこそ、何よりの証拠だよね。

外見が変わるだけで性格まで変わっちゃうってさ。

外見が多少変わるだけでそれなんだから、人間以外のものに変わっちゃったりしたら、それこそもう変わらない方が普通じゃないんじゃない?

私自身、自分が人間じゃないものに変わってしまったら、自分が今の自分でいられる自信がまったくないんだよ。

これは、医科学的に考えても十分に想定できることだと思う。

だってそうでしょ?

辛いこと悲しいこと苦しいことがあったら、

『胸が痛い』

とか言ったりするし、実際、胸が痛いくらいに締め付けられる感覚とかあったりするじゃん?

この肉体的な反応でもって自分が、今、どれだけ辛いのか悲しいのか苦しいのか自分でも改めて認識するんじゃないの?

だとしたら、肉体的にも変わっちゃって、それこそロボットか何かになってどんなに辛くても悲しくても苦しくても『胸が痛く』ならなかったら、自分が本当に辛いのかどうか分からなくなったりすると思わない?

異世界転生で、たとえ人間に生まれ変わったとしても、それまでの自分と似ても似つかない別人の体に生まれたら、やっぱり元のままの自分でいられるとは思えない。

それか、たとえ体は元のそれとほとんど同じでも、<チート能力>なんか授けられちゃったら、影響受けちゃってもおかしくないよね。

いわゆる『イキってる』状態になっちゃっても何も不思議はないと思うし、むしろそうならない方が『リアルじゃない』んじゃないの?

よく『イキリ主人公』とか言ってバカにするけど、そういう変化がない方が不自然だと思うけど?

で、思い付いたんだ。

異世界に転生してチート能力を得て、最初は、元の世界で読んでた異世界物で主人公がイキってるのが批判されてたのを知ってたから自分はそうならないようにしようって誓う主人公の話をさ。

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