私が異世界物を書く理由

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
137 / 1,186

何が<罰>になるかって

しおりを挟む
で、

『不法な拉致監禁により、何の落ち度もない女性入所者に耐えがたい恐怖と苦痛を与えた行為は、いかな事情があろうとも許されるものではない』

ってことで、主人公は十年の<隔離刑>を受けることになった。

<隔離刑>ってのは、まあ、平たく言ったら<島流し>だね。本土から百キロ以上離れた絶海の孤島の施設に隔離されてそこで徹底的に人間としての在り方を再度学ぶっていう刑なんだ。

ただ、その判決が出たのも十数年ぶりで、主人公が送られた施設には他に受刑者はいなかった。だから主人公はただただそこでのんびり田舎暮らしを送ることになるんだよね。畑を耕し、家畜の世話をしながら。

とは言え、ネットもゲームもスマホもないそこでの生活は主人公にとっては退屈極まりない、ある意味では過酷なものだった。元々、転移した時点でそんなのはなかったけど、慣れない環境に置かれたことでそれどころじゃなくてそこまで気にならなかったのが、慣れてきたことで段々きつくなってきたと。

何が<罰>になるかっていうのも、人それぞれかもしれない。そして主人公にとっては、

<牧歌的すぎるスローライフ>

が逆に辛かったみたいだね。木や草を人間に見立てて罵って、鬱憤晴らしをするようになっていく。

こうして主人公は、十年の刑期を終えても今度は他の人間がたくさんいるところには帰りたくなくなり、本人の希望でその島に居着いて、実質的な引きこもり生活をするようになった。

それから二十年。主人公は五十になる前に認知症の症状が出始めて、それこそ大きな石に向かって延々と説教をする姿が見かけられるようになり、さらに数年後、自宅で病死してるのが発見されるんだ。



『他人を罵ったりしない』

たったそれだけのことを守れれば、その世界はものすごく優しいところだった。

誰も自分を傷付けようとはしてこないからね。

なのに主人公は、他人を罵って傷付けようとするのが当たり前っていう感覚を、最後まで捨てることができなかった。

それによって自分で自分を追い詰めてしまった。



こっちの世界でもさ、自分からは何もしなくても傷付けようとしてくる人は確かにいるよ。それは紛れもない事実だ。

だけどさ、これも何度も言うけど、だからって自分から誰かを傷付けようとすれば、

『何もしなくても傷付けようとする人がいる』

のに加えて、

『自分が誰かを傷付けようとしてことで反感を買って攻撃される』

ってのが加算されるんだ。

つまり、自分で自分が嫌な目に遭う原因を、余分に作ってるんだよ。

なんでそんなことをしようとするのか、私には分からない。分かりたくない。

そして子供達にはそうなってほしくないんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

晴明さんちの不憫な大家

烏丸紫明@『晴明さんちの不憫な大家』発売
キャラ文芸
最愛の祖父を亡くした、主人公――吉祥(きちじょう)真備(まきび)。 天蓋孤独の身となってしまった彼は『一坪の土地』という奇妙な遺産を託される。 祖父の真意を知るため、『一坪の土地』がある岡山県へと足を運んだ彼を待っていた『モノ』とは。   神さま・あやかしたちと、不憫な青年が織りなす、心温まるあやかし譚――。    

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)

京衛武百十
ファンタジー
俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。 だが、宇宙船の故障である未開の惑星に不時着。宇宙船の頭脳体でもあるメイトギアのエレクシアYM10と共にサバイバル生活をすることになった。 と言っても、メイトギアのエレクシアYM10がいれば身の回りの世話は完璧にしてくれるし食料だってエレクシアが確保してくれるしで、存外、快適な生活をしてる。 しかもこの惑星、どうやらかつて人間がいたらしく、その成れの果てなのか何なのか、やけに人間っぽいクリーチャーが多数生息してたんだ。 地球人以外の知的生命体、しかも人類らしいものがいた惑星となれば歴史に残る大発見なんだが、いかんせん帰る当てもない俺は、そこのクリーチャー達と仲良くなることで残りの人生を楽しむことにしたのだった。     筆者より。 なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。 なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。

処理中です...