上 下
28 / 1,095

読者としての私は

しおりを挟む
だけど、鳴かず飛ばずで終わった作品にも、たぶん、それを『面白い』と思ってくれた人はいると思う。

少数だっただけで。

残念なことに、出版社にとってはそれが少数だと『価値がない』んだよね。

商売だから。慈善事業じゃないから。

だから出版社は、

『金のため』

に作品を送り出してる。

そう、決して、

『読者のため』

なんかじゃない。

本当に『読者のため』なら、ごく少数であっても『面白い』と感じてくれる読者がいるならそれを無視するわけないよね?

なのに実際には、そういう<少数の読者>は切り捨てられるんだ。

お金にならないから。

過去にも、私が好きだった作品がいくつもそういう形で切り捨てられてきた。読者としての私は、何度も出版社に裏切られてきた。私がアンケートで『面白いです!』って送っても、その意見は無視された。

それのどこが『読者の意見に耳を傾けてる』って? ぜんっぜん傾けてないでしょうが!?

その現実がある以上、私は、『読者のために』なんて口にする編集者は信用しない。『金のために』やってる事実を綺麗な言葉で誤魔化して、いかにも、

『自分は読者を思い遣ってます』

的なアピールをする編集者は大嫌いだ。

この点では、今の私の担当者は、対外的には『読者のため』とは口にしながらも、私の前では、

「こんなの売り物になりません! 商品になりません! 売れるものを書いてください!」

とはっきり言ってくれるから、いい。

もっとも、ずっと私の担当だったわけじゃないけどね。

何度か担当が交代したりもしたけど、正直、酷かったな。編集者の能力的な意味じゃなくて、私のモチベーションとして。

だから彼女は、その度に私の担当に戻れるように上司に願い出てくれたそうだ。でもその所為で彼女は、上の方から睨まれて、出世とかには縁がなくなってしまった。結果、最近はもう、彼女が休んでる時に代理で他の編集が来るくらいで、担当そのものから外れることはない。

私がプロ作家としてやっていけてるのは、彼女のおかげだ。頭が上がらない。

そういう意味じゃ、今の私は、彼女のためにやってるっていうのもあるかな。

私の所為で出世街道から外れてしまった彼女の恩に報いるために。

何て言いながらも、彼女が来ると、丁々発止、やり合っちゃったりするけどさ。

でもなあ、そういう形でお互いに本音をぶつけられるからやれてるっていうのもあると思う。

彼女も、

「売り物になるものを書いてください!」

ってはっきり言ってくれる。

そして私も、

「知るか! 私は私が面白いと思うものを書くだけだ! それが商品になるかどうかはお前らが勝手に選べ!!」

って言い返せる。

そして次の作品を生み出せる。

そこに、

『読者のため』

なんていう綺麗事はないんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

処理中です...